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そんな双子のやり取りが聞こえる付近のテーブルでは、あまり乗り気でない様子のウルカがいた。
「ユリネのやつ、単に自分が盛り上がりたいだけじゃないのか?」
「まぁ、別にいいんじゃない? 何だかんだ言って、料理は美味しいしさ」
ティオは割と楽しげで、先ほどから鬼人族の青年と話をしている。ウルカの隣のヴァニラも、食事ができればそれで良いのか、ひたすら肉にかぶりついていた。
「それに……、何だ、あいつらは。どう見ても、鬼人には見えないが」
物憂げなウルカの視線の先には、すでに空気に馴染んでしまったようなショコラとコロネの姿が。「ショコラ! これうまいぞ!」だの、「本当だねぇ! コロネ、これも食ってみな!」だの、勝手に料理をつまんでは、大いにはしゃいでいる。
「ああ、猫人と鼠人のことね。『セイレーンの歌声』をくれたから、ついでに助けたんだ」
ティオが差し出す小瓶を受け取ったウルカは、その中身をまじまじと観察する。この空気、確かに高級なセイレーンの歌声のようだ。
「結構いい報酬でしょ?」
「……そうだな」
彼は短くそう答えて、懐にその小瓶を仕舞った。これは、思いがけない品を手に入れた。




