26
レオの路地裏にある、双子の天使が切り盛りしているカフェ。今日は朝方から、「貸し切り」のプレートが掛かっている。真夜中に救出した鬼人たちのために、ユリネが楽しげに提案したのだ。「救出パーティーやりたーい!!」と。
「はいはーい! みんなー、じゃんじゃん食べてねー!」
ユリネはぴょんぴょん跳ねながら、肉やサラダが盛られた皿を配膳する。「パーティーなど、してどうする」と渋るウルカを力づくでねじ伏せた彼女は、自分の要望が叶って嬉しそうだ。
「チャイー! 全然足りないよー! 早くはやくー!」
彼女は先ほどからキッチンとホールの間を行ったり来たりしている。鬼人たちは随分とお腹が空いていたようで、まだまだ料理が足りないのだ。
「ユリネ! そんなに言うなら手伝ってよぉー!」
ユリネにしつこく催促され、キッチン担当のチャイは泣きそうになっている。急かすばかりで全く手を貸してくれない妹に、彼女は涙目で悲痛そうな声を上げた。
「ユリネだって作れるでしょ!? ううっ、何で私だけ……」
「えー、だってー、作るの面倒くさいんだもーん! うひゃひゃひゃひゃ!」
「そ、そんなぁ……」
近年普及し始めた電気オーブンの前で、おろおろと無駄な動作を繰り返すチャイ。パンはまだ焼けず、ただひたすらユリネに急き立てられている。
「あの……。私にできることがあれば、お手伝いしますが……」
チャイの慌てっぷりを見かねて、鬼人族の女性が声を掛ける。群青色の長い髪に、夕方のような瞳。ルーチェの母親だ。
「ううっ……! 手伝ってほしい……! けど、お客さんだし……」
「そーそー! お客さんは、ゆっくりしててくださーい!」
「ユ、ユリネ! ユリネは手伝ってよぉ……!」




