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ティオたちが難なく牢に到達した一方、ウルカは劣勢を強いられていた。
「中々面白い魔法を使うエルフだ。敗北を味わわせたら、特別に実験に掛けてやろう」
シュアンは氷属性と雷属性の使い手らしく、先ほどから交互に魔法を放っては、ウルカの反応を見て楽しんでいる。
「逃げ回ってばかりではつまらんな。それとも、これ以上の攻撃手段がないのか? ユニークなエルフの割に、どうやら魔力は弱いようだな」
ウルカは肩で息をしながら、相手の傲慢な姿を見た。確実に、弄ばれている。
決定的な攻撃に転じることができないのは、彼がエルフではないからだ。フェアリーは本来、戦闘を好まない種族だ。それは性格的な面もあるが、そもそも内在する魔力が弱く、体質的に派手な戦闘向きではないのだ。得意魔法のラアウも、敵の油断を突かなければ当たらない。
(ヴァニラ……!)
ウルカはちらりと後方を見たが、どこに消えてしまったのか、そこにヴァニラの姿はなかった。これでは、助け船も期待できない。
「こんなものか? ……なら、そろそろ終わりにするか」
十分満足したと言わんばかりに、きれいな白髪を掻き上げるシュアン。ついに手加減を止め、全力で潰しにくるようだ。
(……! スキルか……?)
シュアンの空色の瞳が、微かに動く。これは、スキルが発動する合図だ。
(『命中』か……。これは厄介だな……)
ただでさえ高火力な、シュアンの魔法。さらにスキルまで使われたら、誰しも決して無事では済まないだろう。ウルカは白い瞳を見開いて、自身のスキルを発動した。浮かび上がる古代文字とともに、敵のスキルが「無効化」されていく。
「そこに跪け!!」
――シュアンの放つ、鋭い閃光。青い稲妻が空を裂き、ウルカの脳天に襲い掛かった。




