表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
3-素晴らしき人間の栄華
55/151

19

 ――「ホークー レレ」。ヴェガの詠唱は、背後から這い寄ってきた謎のアイビーによって中断された。「うわっ!」と叫んだ彼女は、優しげな葉を茂らすツタに持ち上げられてしまう。


「そこまでです、ヴェガ」

 奥から出てきたのは、サファイアのような髪をきれいに垂らした男性だった。緑色に光る繊細なイヤリングに、宝石のような碧眼。ヴェガと同じ軍服を着ているのを見るに、彼女と同じ身分なのだろう。

「これ以上の戦闘は禁止です。監獄を破壊する気ですか?」

 彼の姿を見たヴェガは、面白くなさそうに口をへの字に曲げた。明らかに欲求不満な様子だ。

「ケルス! 邪魔しないでよ!」

「何を言っているのですか。アーネラとしての自覚を持ってください」

「やだやだやだやだ!」

 駄々をこねるヴェガと、呆れたようにため息をつくケルス。ティオは状況の変化に付いていけなかったが、どうやら戦闘は強制的に終了されたらしい。

「すみませんね、騒がしくて」

「え? あぁ、うん……」

 突然現れたケルスは、ティオに対して律儀に頭を下げる。まるでヴェガの保護者のような振る舞いだ。

「ケルスのバカ!! あいつ、侵入者なんだよ!?」

「どうやらそのようですが、人間同士で争っていても無利益です。第一、収容されている亜人の保護が優先なので。あのままだと、あなたのせいで監獄が血まみれになるところでしたよ?」

「うぐぐ……」

 ぐうの音も出ないヴェガを見て、ケルスは改めてティオの方を向いた。

「そういうわけですので。このまま大人しく出て行ってくだされば、我々はこれ以上手出ししません」

「言われなくても、そうさせてもらうよ」

 ティオは人当たりの良さそうな笑みを浮かべて、彼の言うことに従った。どの道、鬼人の救出には成功したのだ。アーネラが何を考えているのかは知らないが、逃がしてもらえるのならありがたい。ティオはぺこりとお辞儀をして、さっさとその場を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ