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「おれの仲間の情報によると、最近ルラに連行された鬼人族が何人かいたらしい。監獄・エハのM棟と、クプのE棟……。そこが、このちびっ子の仲間がいるところだってさ」
全員が座ったところで、ライチが依頼に関する報告を始めた。吸血鬼間のネットワーク、恐るべき広さだ。これがあるからこそ、ウルカはライチに頼らざるを得なかったのだ。
「M棟とE棟のどこにいるのかまでは不明だが、仲間が言うには奥の方じゃないかって。特に新参者は、奥に入れられやすいらしいぜ」
「……吸血鬼の情報パイプは、さすがと言ったところだな」
素直に称賛するウルカに対し、ライチは「まぁな!」と得意げな顔をしつつ、より一層左腕に寄ってきた。
「けどよ、どうやってちびっ子の仲間を助けるんだ? あそこ、相当警備堅いぞ」
奴隷産業が主なルラ国にとって、監獄の警備は重要な任務だ。鬼人たちがいるであろうエハとクプの監獄にも、当然ながら強力な警備が敷かれている。
「一つの監獄に収容されてたら、随分楽だったのにね。最悪、僕とルーチェが行くだけで良かったわけだし」
ベッドに寝そべったティオが、こう口を挟んだ。左右の三つ編みを気にしつつ、毛布の上でゴロゴロしている。
「ちょっと光の加減が心配だけど、まぁ完全な暗闇じゃないと思うし、魔法で粗方姿を隠して動き回れるからさ」
「えっ!? そんなことできるのかよ!?」
ティオの魔法など全くの初耳であるルーチェは、彼のさらっとした発言に驚きの声を上げた。
「言ったでしょ? 僕は今の人間とは違うの。何せ、光属性魔法が使えるんだから」
「……? まぁとにかく、おまえすげぇな!」
「今の人間とは違う」というおかしな言葉に首を捻りつつも、ルーチェはティオの力に目を輝かせた。姿が消せる魔法とは、救出作戦に打って付けだ。
「そうだな。本当はティオに一任したいところだが、ティオが二つの監獄を回ると時間が掛かる。脱走はすぐにバレるだろうから、もたもたするわけにはいかない。二手に分かれて、同時にエハとクプに侵入するしかないな」
ウルカはそう言って、計画を立て始めた。




