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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
3-素晴らしき人間の栄華
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7

 人間が台頭した歴史と、亜人が奴隷として売買されるようになった歴史は、ほぼピッタリと重なる。その一大拠点として今も栄えるのが、世界的な大国・ルラだ。ウルカも何度か足を運んだことがあるが、亜人の身としては訪れて気持ちの良い国ではない。人間が住まう一等地に、国の縁辺部にある監獄。様々な地域で捕らえられた貧しい亜人たちは、概ねこの監獄に収容されることになる。ルーチェの仲間たちが連行された場所も、おそらくここであろう。……ここまでは、容易に想像できる。だが問題は、林立する四つの監獄の内、どこに収容されているかということだ。


「ウルカー!」

 ルラの隣町にある、とある簡素な宿屋。ウルカ一行と依頼人のルーチェは、ここでとある人物と待ち合わせることになった。ウルカ的に言えば、「待ち合わせることになってしまった」の方が正しいが。

「おれに頼ってくれて、メチャクチャ嬉しいぜ!」

 外の良い天気とは裏腹に、黒いカーテンで閉め切られた薄暗い室内。ウルカが扉を開けた瞬間、部屋の先客が勢い良く飛びついてきた。紫色の翼をパタパタさせながら、嬉しそうな声を上げる、ティオの友人で吸血鬼のライチ。今日も相変わらず、ウルカにベタベタとくっついてくる。

「……実に不愉快だが、おまえの得意分野だからな」

 ウルカは何とか苛立ちを抑えながら、ライチに向かってにっこりと笑みを浮かべた。頼む側として、高圧的な態度は取れない。

「ウルカの頼みとあらば、おれは何でもするぜ!!」

 左腕に擦り寄る、藤色の短髪。その軽々しい言動に、ウルカは思わず複雑そうな顔をした。

「なら、無駄な賭けごとは止めろ。俺が頼めば、何でもするんだろう?」

「うっ……」

 ウルカの言葉にわずかにひるんだライチだったが、即座にこう言い返す。

「ウルカが血を吸わせてくれたら、考えてやってもいい!」

「……」

 じっと見つめてくる彼の藍色の瞳に、無言で返すウルカ。隙あらば吸血を試みる彼に、内心うんざりしている。

「ちょっと、ライチ。話進まないから、そこら辺で切り上げてくれる? ウルカにくっついたままでいいから」

「おい……」

 ウルカはティオの粗雑感に嫌悪を露わにしたが、「別にいいでしょ?」とあしらわれてしまった。

「オッケー。んじゃ、適当に座ってくれ」

 実はこの宿、ライチがよく利用する場所なのだ。家の中らしくベッドを指差す彼に、遠慮なく毛布の上に座るティオとヴァニラ。ただ一人、状況に付いていけないルーチェだけが、扉付近でポカンとしていた。


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