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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
3-素晴らしき人間の栄華
42/151

6

「……分かったよ」

 ……数分後、ついに少年が言葉を絞り出した。ウルカの顔をきっと睨み付けながら、はっきりと言い切る。

「おれの角を報酬に、おれの仲間を救えよ!!」

 甚だ人にものを頼む態度とは言い難いが、それでも少年は苦渋の決断をした。仲間の救出に比べたら、自身の誇りなど取るに足りない。

「分かった。この依頼、受けよう」

 ウルカはゆっくりと頷いて、ヴァニラの方を向いた。「ヴァニラ」と声を掛けると、彼女は少年にずいと紙袋を差し出す。

「どこから逃げて来たのかは知らないが、腹が減っているだろう? 食え」

 唐突に気遣いを見せるウルカに、少年は少し面食らったような顔をする。が、すぐに「ふん!」と言いながら、乱暴に紙袋を受け取った。

 紙袋の中には、三日月の形をしたパンが何個か入っていた。バターの優しい香りが、ふんわりと漂っている。

「……うまそう」

 思わずぽろっと零してしまった少年だったが、即座にはっと目を見開いて、「な、なんでもねぇよ!」と頬を赤らめた。どうやら不機嫌を続けたいらしい。

 

「そう言えばさ、名前、何ていうの?」

 黙々とパンを食べ始めた彼に、ふとティオが尋ねた。目の前の鬼人の機嫌は、パンの効果で少しばかり直ったように見える。

「ノーチェ」

 パンを頬張りながら、彼は答える。随分とお腹が空いていたらしい。

「ノーチェ? 可愛い名前だね」

「可愛くねぇよ!!」

「何で怒るの? 可愛いって、良いことだと思うけど?」

「良くねぇ!!」

「ふーん、変なの」

 鬼人の少年・ノーチェと、謎多き青年・ティオ。二人の緊張感のない会話に、リーダーのウルカは静かに笑みを浮かべた。彼だって、別に明るい雰囲気が嫌いなわけではないのだ。


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