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「……金を作る方法なら、いくつかあるだろう。思いつかないのか?」
肩を震わせながら頑なに動こうとしない少年を見て、ウルカは仕方なさげに代替案を出した。本来、このような真似はしないのだが、微かな善意が働いたのだろうか。
「……金を作る方法?」
俯いていた少年は、彼の言葉に食いついた。群青色の髪の毛が、その動きに合わせて小さく揺れる。
「うわぁ、そういうこと? ウルカって、かなりひどいこと言うよね」
次の言葉を察したティオは、少年の後ろで少々引いたような声を出した。「可哀想だなぁ」とつぶやきながら、彼の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「何なんだよ、一体」
「一番手軽な方法は、さっきおまえが話していたやつだ。思い出せるだろう?」
「おれが言ってたやつ……?」
ウルカのセリフでしばし熟考した少年だったが、次第に顔色が悪くなっていった。
「……もしかして、おれの角!?」
「そうだ。その二本の角を報酬に、依頼を出す。鬼の角は高く売れるからな」
この提案は、少年にとってあまりにも酷だった。角は鬼人族の誇り。それを失うことは、まさに断腸の思いだ。
顔を歪めて苦しそうにうなる少年。対するウルカは、それを鼻で笑った。
「おまえが誇りを貫けば、おまえの仲間は自由を失う。おまえが誇りを失えば、おまえの仲間は救われる。そのどちらかだな」
静まり返る雰囲気。ヴァニラが紙袋を漁る音だけが、何度も部屋に鳴り響いた。




