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「……おれの仲間が、人間に捕まったんだ。だから、おまえたちに助けてほしくて」
少年はぶすっとしながらも、用件を口にした。先ほどの態度とは打って変わって、どことなくしおれている。
「村が襲われて、みんな捕まった。おれは何とか逃げ切れたけど、一緒に暮らしてた仲間は……」
――突然、ティオが少年のマリンキャップを取った。「あ、おい!」という彼の頭には、黄色く透き通った小さな角が二本。
「鬼人族か。珍しいな」
鬼人族の数は年々減少しており、今ではかなりの少数派となってしまっている。ウルカ自身、鬼人を見るのは随分と久しぶりだ。
「……鬼人は人数が少ないから、鬼人の角も高く売れる。きっとあの人間たちも、おれの仲間の角を折るつもりだ」
「いや、それだけでは済まないだろうな。不要になった亜人は奴隷として売り飛ばされる可能性が高い。おまえの仲間も、二度と村には帰ってこないだろう」
それを聞いた途端、少年は顔を引きつらせる。
「そ、そんな!! ……おい!! 何とかしろよ!!」
「何とかしろと言われても、金は用意してきたのか?」
ウルカの現金な言葉に、彼は「うっ」と気まずそうな声を上げた。脅迫まがいのことをしたのだ。当然、金など持ち合わせているはずがない。
「俺たちは慈善団体じゃない。金がないなら去れ」
冷淡な声色に、組まれた長い脚。金のない依頼人には、ウルカはあくまで冷酷に接する。
「サイテー!! ケチ!! この人でなし!!」
少年は彼の言葉に憤り、突然ばっと立ち上がった。
「人でなしって……。僕以外、みんな人じゃないよね?」
「おそらく、おまえに向けて言っているんだろう」
「えー? ひどいなぁ」
間の抜けたウルカとティオの会話に、少年はますます苛立つ。
「うぅぅっ……」
怒りのあまり思わず涙目になる彼。他に行く当てなど、どこにもないのだろう。




