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カフェスペースで威勢の良い声を上げていたのは、確かに小さな少年だった。乱雑に切られた群青色の髪に、茶色のマリンキャップ。夕方の空のような色の瞳で、奥から出てきたウルカを睨んでいる。
「代行業者はおまえか!?」
少女のような高い声。ナイフを向けて脅しているようだが、可愛らしい芝居にしか見えない。
「そうだが、何の用だ?」
冷ややかな視線を送ると、彼は一瞬身じろいだ。しかし即座に体勢を立て直し、「おい!!」と叫ぶ。
「おれの仲間を救え!!」
……冗談かと思ったが、少年は本気だ。ナイフを振りかざしながら、「仲間を救えよ!!」と声を張り上げている。
「……物騒だが、依頼人のようだな」
ウルカは「ふっ」と鼻で笑うと、奥に向かって声を掛けた。
「ユリネ、起きたか?」
「はいはーい! 今起きましたー!」
言葉通りの寝起きの格好で、カウンターから飛び出してくるユリネ。青い髪はボサボサで、おかしなキャラクターが描かれたTシャツを身に着けている。
「依頼人だ。下まで運べ」
「了解でーす!」
彼女は陽気に右手を上げると、少年の下まで一気にはばたき、彼をひょいと担ぎ上げた。
「や、やめろよ!! 下ろせ!!」
少年は怒った様子で、ユリネの背中にナイフを突き立てる。しかし、ユリネは全く意に介さない。
「ユリネ、天使だもーん! 痛くても死なないしー! ぎゃはははー!」
天使の最大の利点、それは死なないことだ。ウルカが双子の天使を上階に住まわせているのは、いわゆる盾代わりだ。不死身の体ほど、有能な人材はいない。
「くっそーーっ!!」
少年は足を乱暴に動かしながら、可愛げのある顔を歪める。彼の脅迫作戦は、ものの数分で破綻してしまった。




