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ついにダンジョン最奥部、開けた空洞に到着したノア。弟子たちと合流できずに、ここまで来てしまった。
「リリ!! ミミ!!」
大きな声で叫ぶが、返事はない。自分が発した名前は、冷たい空気に溶けて、そして静かに消えた。
(まさか……。いや、そんなことが……)
ノアの頭の中に、嫌なビジョンが沸々と浮かび上がる。口元から血を滴らせるレッドドラゴン。その足元には、可憐な少女の右腕が――。
「ぐるうぅぅぅっ……!!」
――突然、少女が低くうなる。はっとして顔を上げると、そこには巨大な体躯のドラゴンがいた。真っ赤な胴体に、力強い翼。黒い瞳でギロリと睨んでくるやつこそが、正真正銘、今回の討伐対象だ。
「くそっ……!!」
まだ、二人がやられたとは限らない。しかしこの状況では、どちらにせよドラゴンを倒さないわけにはいかない。ノアは少女を後ろに下げ、ゆっくりとドラゴンと向き合った。
「行くぞ! ウラ!!」
両手を前方に突き出し、短く詠唱する。全身の魔力が彼の言葉に呼応し、赤い魔法陣を生み出した。灼熱の業火が、一斉にドラゴンへと襲い掛かる。
「ぐううぅぅぅ……」
苦しそうな声を上げるドラゴン。だがこの程度で倒れるモンスターではない。即座に体勢を立て直し、おぞましい口から紅蓮の炎を吐いた。
「ウア!!」
ノアは瞬時に指を鳴らし、水流を発生させる。ドラゴンの炎は徐々に水に呑まれ、じきに相殺された。
「よし――」




