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ダンジョンの内部は、不気味なまでに薄暗い。逼塞したその空間を、ノアと少女は揃って歩く。時々出現するアンデットを、容易に討伐しながら。
モンスターのスカルがゴロリと転がり落ち、一瞬で消滅した。ノアの高火力な魔法の前では、巨大なアンデットも赤子同然。彼は涼しい顔で魔法を放ち、淡々とコアを回収していく。赤、青、緑……。片手間に余計なモンスターも倒したので、彼の手元には多くのコアが集まった。ギルドに持参すれば全て換金対象となるので、彼はいつも沢山のモンスターを討伐する。
ノアの様子を見て、隣の獣人少女は驚いたような表情を浮かべた。圧倒的な強さを誇る彼を見て、驚愕しない冒険者はいない。
「随分奥まで来ちゃったけど……。二人はもっと先に行ったのか?」
複雑なダンジョンも多い中、ここは至って単純な一本道だ。未だ合流できないとなると、二人はさらに奥に進んだと考えるしかない。
(この奥にはレッドドラゴンがいるんだよな……。まずいぞ……)
内心、ノアはドキドキしていた。ドラゴン族はかなりの強敵で、討伐するのに手こずる場合がある。彼は人間でありながらスキルを所有していないので、純粋な魔力で勝負しなければならず、少々面倒なのだ。師匠でさえもそうなのだから、弟子の二人となればさらに接戦になるだろう。運が悪ければ、強靭な爪で引き裂かれた上、無残に捕食されてしまうかもしれない。
(頼む……! 間に合ってくれ……!)
道中のモンスターを瞬殺しながら、彼は足を速めた。彼女たちは大事な弟子だ。当然だが、こんなところで死んで欲しくはない。心配そうな狼少女を横目に、彼はじっと前だけを見つめた。




