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「待ってください! なら、俺たちも二手に分かれます!」
……リーダーの突然の一言に、パーティメンバーは騒然とする。
「ハヴィカ! それはいくら何でも危険でしょ!?」
「合流できなくなっちゃうかも……」
ソフィとノーシスが否定的な意見を述べる中、彼は「それでも!」と叫んだ。
「俺、放っておけない! この先は強力なモンスターがいる!」
きっぱりとそう言い切ると、彼はすっとウルカの顔を見た。
「冒険者は、ただ自分の目的を果たせばいいわけじゃありません。危険な人を見掛けたら、すぐに助ける。困っている人がいたら、救いの手を差し伸べる。そういう存在なんです」
(そうか……?)
ウルカは密かに眉をひそめたが、彼は純真な瞳でにこっと笑い掛けてきた。
「だから、俺たちも二手に分かれます。あなたたちだけでは、絶対に危険ですから」
彼は自分とノーシス、アーサーとソフィのチームに分け、ウルカにアーサーのチームを寄越した。
「……ハヴィカのやつ、本当にお人好しなんだから」
「まぁ、何とかなるだろ。今までだって、何度もこういうことあったしな」
ソフィとアーサーは顔を見合わせてこう話した。彼の親切は、最早日常的なことらしい。
「お兄さん、本当に優しいね」
「いやいや、当然のことだよ」
ティオたちは仲良さそうに、左の道へと入っていった。その背中を見つめながら、ウルカはふと考える。人間という、不思議な種族について。
(ああいうやつがいるのに、醜い争いが起こる……。つくづく、エルフとは大違いだな)
……馬鹿馬鹿しい、実に無意味な考えだ。そう思いながらも、彼は懐古せずにはいられなかった。幼少期には確かに存在していた、「調和」を基盤としたエルフ社会のことを。




