表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
7-偏愛の執着
143/151

16

「……っと、いけない」

 彼はすっと背後に右手を回し、現れた狼モンスターへと構えた。磨かれた美しい刃が、薄暗いダンジョン内でキラリと光る。

「アーサーとソフィは魔法を詠唱しろ! ノーシスは援護を頼む!」

「おう!」

「任せて!」

 アーサーと呼ばれた男冒険者は、左手を突き出して雷属性魔法を詠唱した。

「ヘキリ!」

 ――宙を裂くような閃光が走り、モンスターの足を素早く止める。彼らは進路を邪魔され、「ぐううっ……」とうなり声を上げた。

「ウェウ!」

 続けざまに、ソフィの名を持つ女冒険者が、茶色のポニーテールを揺らしながら両手を突き出した。魔法陣から鋭い草の刃を生み出し、モンスターに対して攻撃を浴びせる。

「があうっ……!!」

 皮膚を裂かれたモンスターが怒りを露わにし、最前線で剣を構えているハヴィカに向かって襲い掛かってきた。

「ウハネ!」

 次の瞬間、ノーシスがハヴィカに対して増強魔法を掛ける。まばゆい光に包まれた彼は、目にも止まらぬ速さでモンスターへと突っ込んでいった。

 

「があっ……!」

 ――刹那、まさに一瞬。何体ものモンスターは、力なくその場に倒れ込んだ。彼らの肉体はシュウッと消え、赤茶色のコアがゴロンと転がり落ちる。

「よし。みんな、やったぞ」

 ハヴィカはコアを手に、仲間たちに終了の合図を出した。剣を背中に収め、仲間に労いの言葉を掛ける。

「お疲れ様。いい動きだった」

「へっ、まぁな」

「いつも通り、やっただけよ」

 得意げな表情を浮かべるアーサーとソフィに向かって、彼はうんと頷いた。そして、後方でじっとしているノーシスの方へと近づく。

「ノーシスも、お疲れ様。増強魔法のタイミング、良かったぞ」

「ハヴィカ……。わたし、役に立ってる……?」

 不安そうな顔をする彼女の肩を、彼は優しく叩いた。

「ああ。もちろんだ」

 ……ノーシスの顔が、ぱあっと明るくなる。心の底から、彼女は喜びを感じていた。

「お兄さんたち、強いねー!」

 ティオは無邪気な声を上げ、ハヴィカたちの方へと駆け寄っていく。

「僕、あんな剣術、見たことないよ!」

「幼い頃から練習している技なんだ」

「へー!」

 弟のようにハヴィカの横にくっ付く彼に、ウルカは白けた視線を送った。

(あいつ、新しい友人でも作るつもりか……?)

 ちらりと目線を移した先には、相変わらずベタベタと寄ってくるライチの姿。彼だって、ティオが五十年ほど前に親しげに会話をしたのがきっかけだった。

(人間は確かに役に立つが……、面倒人が増えるのはごめんだ)

 ウルカは内心そう思いながら、ライチを力づくで引き離そうとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ