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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
7-偏愛の執着
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14

 そのダンジョンは、カプの中でも難関に位置するダンジョンらしく、今から潜入しようとしているパーティが気合を入れていた。

「ウルカ、ターゲットはどの辺りにいるかな?」

「分からん。しばらくはヴァニラに頼ることになるな」

 ウルカがぽんと肩を叩くと、ヴァニラは小さく頷いた。彼女の鼻は非常に頼りになる。

「よし、行くぞ――」


 ――直後、彼はライチに脇を突かれた。

「何だ」

 そう言って横を見ると、先ほど気合を入れていたパーティがこちらに近寄っている。

「すみません。もし良かったら、一緒にこのダンジョンに潜入しませんか?」

 リーダー格の青年剣士が、ウルカに対して気さくに声を掛けてきた。小豆色の髪の毛を印象良く後ろで結んだ彼は、蜜柑色の瞳でウルカ一行を見回す。

「お節介かもしれませんが……、あまりにも軽装備だなと思ったので。そのまま潜ったら危険ですよ?」

 この剣士は、あくまで親切だ。ウルカたちの様子を、ありのままに述べている。

「おい、ハヴィカ。行動人数が多くなると、モンスターに遭遇しやすくなるぞ?」

「うん……。危険……」

「それにさぁ、いかにも『お守りしますよ!』的な感じだけど、私たちだってそんなに強くないわよ?」

 後から追いかけきた三人の仲間が、口々に忠告する。ウルカたちを合わせたら、九人の大人数になってしまう。身軽に動けない危険性がある。

「みんなの言いたいことは分かる。でも、俺たちだけが良ければ、それでいいのか? 俺はそうは思わない」

 ハヴィカの瞳はキラキラと輝いている。何の悪意もない、純粋な眼差し。

(……俺からしても、こいつの気遣いは大きなお世話なんだが)

 ウルカは心の中でため息をつき、剣士・ハヴィカの背負った剣を見つめた。どこかで聞いたことのある名前だと思ったら、例の冒険者殺しのとき、レッドドラゴンを倒した青年だった。

「ノーシス、俺たちの未来を『予知』してくれ。この人たちと行動したら、まずいことになるか?」

 オリーブ色の髪の少女は、彼の言葉を聞いて、黒い瞳を大きく動かした。スキルを発動させて、直近の未来を視通す。

「……今のところ、悪い運命は視えない」

「ほら、な? ノーシスもこう言ってるし」

 ハヴィカの嬉しそうな顔に、他の仲間も渋々頷いた。ウルカの同意を得る前から、彼らはともに行動する気になってしまったようだ。

「悪いが、俺たちは――」

「わー! お兄さんたち、一緒に来てくれるの? ありがとう!」

 ウルカの言葉を遮ったのは、満面の笑みを浮かべたティオ。「どういうつもりだ」と冷ややかな視線を送ると、何故かウインクを返された。何か、策でもあるのだろうか。

「よし! それじゃあ、一緒に行きましょう!」

 ハヴィカは元気の良いポーズを取ると、先陣を切って歩き始めた。待ち構えるのは、モンスターの巣窟、奥深いダンジョンだ。

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