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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
7-偏愛の執着
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12

 カプという地名で知られる冒険者の聖地には、非常に多くの冒険者がいた。人間の他にも、エルフや獣人の姿も見受けられ、各々ダンジョンに潜っている。

「年越しだってのに、みんな偉いね」

 モンスターの討伐のため、念入りに装備を整えている彼らの様子を見て、ティオは感心したような声を上げた。冒険者には、年越しすらも関係ないようだ。

「まぁ冒険者ってのは、そういう職業だからな。摩訶不思議なダンジョンって場所に潜って、前人未到の謎の場所に行って、そんで世界に貢献するんだ」

 ライチはそう言いながら、青い空を見上げた。情報を持った仲間が現れる気配はない。

「ライチ。ターゲットがこの場所に残っている可能性は、どれぐらいあるんだ?」

「おれの観測上、隅々までダンジョンを巡った場合、最短でも一週間は掛かる。どんなに短いダンジョンでもな。だから、そいつの目的がダンジョン探索なら、十二分に考えられるぜ」

 冒険者がダンジョンに潜る目的は、主に二つ。一つ目は、モンスターとの遭遇だ。未発見のモンスターに遭遇する可能性も大いにあるが、大抵は資金稼ぎが目的となる。そして二つ目は、ダンジョンの探索だ。ダンジョンは未だ解明の進んでいない場所なので、こちらは研究に貢献するという意味合いが強い。ルミナがどちらの目的を持っているのかは定かではないが、後者ならばここにいる可能性が高いということだ。

「けどよ、すっごい数のダンジョンだぜ? 山でも張るのか?」

 ライチの言う通り、ここには何十個ものダンジョンがある。しらみ潰しに探すことは、まず不可能だ。

「ヴァニラ」

 ウルカはヴァニラを呼び寄せ、持参した紙コップを手渡した。大分時間が経ったもので、少し汚くなってしまっている。

「ウルカ、何だそれ?」

「依頼人が持ち歩いていた物だ。ターゲットがギルドで捨てたやつを拾ったらしい」

 そう言うと、ライチは「げっ」と言いたげな顔をした。

「ゴミだろ、そんなの!」

「依頼人にとっては、ゴミも宝物なんだろう。俺には理解できないがな」

 ヴァニラは嫌そうに顔をしかめたが、仕方なさそうににおいを嗅ぐ。その後、ダンジョンの方へと赴き、念入りに周囲のにおいを嗅ぎ始めた。

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