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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
7-偏愛の執着
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3

「金貨百枚……!?」

 ウルカは目に見えて動揺した。レオに住む金持ちの貴族でさえも、せいぜい五十枚が限度だ。それにも関わらず、目の前の冒険者は容易く金貨百枚を投げた。たった一人の、しかもさほど知らないような男のために、普通ここまでするだろうか。やはり正気の沙汰ではない。

「お姉さん、本気なの……?」

 ティオは赤い瞳を何回もしばたかせ、ベラの青い瞳を凝視した。その視線に対し、彼女は「ふん!」と鼻を鳴らす。

「ルミナが手に入るなら、金貨なんて何枚でもあげるわよ!! 私は本気なんだから!!」

 直後、彼女は「とにかく!!」と大声を上げた。

「明日の夜になる前に、ルミナをルアの街に連れて来なさい!!」

 ルアはメレ国の郊外にある街で、ここからそれほど遠くない位置にある。ベラは何としてでも、彼と一緒に年を越したいらしい。

「それはいいが、ルミナとやらはどこにいるんだ?」

 ウルカの疑問に、彼女は大きく目を見開いた。

「そんなの、私が知っているわけないじゃない!! ここに来るために、私はルミナにの後をつけるのを止めたんだから!!」

 ……ぴしゃりとそう言い切られ、ウルカは思わず苦い顔をする。どこにいるのか分からない冒険者を、しかも明日中に見つけ出さないといけないのだから、無理もない。

「私は今からルアに戻って、ルミナと一緒に過ごす準備をするから。後は頼んだわよ!」

 言いたいだけ言葉を吐くと、ベラは大きな音を立てて階段を上っていった。

 

「困ったね、ウルカ」

 ……ベラが去っていった後、ティオは小さく首をすくめた。肩に掛かった銀髪が、サラサラと流れていく。

「行方知らずの冒険者を、明日中に誘拐してこいってさ」

「困ったどころの騒ぎではない。しかも、もうすぐ明日だ」

 ウルカはそう言うと、静かにため息をついた。何の気なしに奥で眠っているヴァニラが、今は心底羨ましい。

「どうする? ライチに頼んでみよっか?」

「……そうだな」

 ウルカは金貨を一瞥しながら、ゆっくりと頷いた。依頼は何としてでも達成する。大多数の人間を敵に回さないためには、それだけは守らなければならなかった。

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