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「……一か月前、とあるギルドで彼と知り合ったの。私のことを、『きれいだね』って、『好きになっちゃいそう』って言ってきて……」
「ふんふん。それで?」
「実は私も、彼に一目惚れしていて……。だから、『私と一緒に旅しませんか?』って言ったのよ。でも、『君が俺のパーティに参加してくれるならいいよ』って返されて……。
『パーティに参加する』ってことは、彼以外の仲間とも一緒に行動しなくちゃいけないってことでしょ? 私は彼と二人きりで旅したいのよ! 他の人間と一緒なんて嫌!」
「へ、へぇ……」
相槌を打つティオの顔も、徐々に怪しくなっていった。知り合ったばかりの男に対して、あまりにも執着しすぎではないだろうか、この女は。
「そのときは曖昧に言葉を濁したんだけど、私やっぱり彼のことが気になって、一か月間、こっそりと彼の後をつけていたの。そしたら……!! 彼のパーティ、みんな女だったのよ!! 五人が五人、みんな女!! それに!! ルミナったら、色んな女に声を掛けまくっていたのよ!! ねぇ、信じられないと思わない!?」
「うん……。そうだね……」
必死に話を追うティオの傍ら、ウルカは最早諦めていた。女慣れしているルミナの言葉を真に受け、挙句の果てにはこじらせてしまったようだ。一か月間の尾行など、悪質なストーカーの域だ。
「私が好きなのはルミナだけ!! なのに、彼は選び放題ってわけ!! 理不尽よ、こんなのっ……!!」
(相当重い一目惚れだな……)
うっかり口から出そうになった言葉を、ウルカは慌てて呑み込んだ。これ以上刺激したら、次は何を仕出かすか分からない。
「……だから、私、彼を独り占めすることにしたの。他の女になんか、絶対に渡さない。ルミナは私と二人きりで、幸せに年を越すの」
そう言い放つと、ベラはきっとウルカの顔を睨んだ。
「金さえ払えば、何でもしてくれるんでしょ? だったら、ルミナを私のところに連れて来なさいよ!」
――乱雑に置かれる皮袋。その中には、驚きの枚数の金貨が入っていた。




