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土産やら夕飯やらとともに帰ってくると、カフェスペースは甘いお菓子のにおいに包まれていた。
「あ、おかえりー!」
ウルカたちの顔を見るや、ユリネとチャイがパタパタと駆け寄ってくる。二人が両手いっぱいに持ったカゴの中には、沢山のクッキーが。
「シフォン! いろんな味のクッキー作ってみたよ!」
ユリネがカゴをずいと持ち上げ、その中身をシフォンに見せびらかした。
「プレーンでしょー、チョコでしょー、あ、あとチーズ味も作ったよ! 形も可愛くしたんだー!」
「わぁー! 美味しそう!」
シフォンは素朴な色合いのクッキーを見つめ、そして目を輝かせた。今年の限定メニューは、これに決定だ。
「あ、帰ってきたんだ」
盛り上がる双子の後ろから、ティオがひょいと顔を出した。小さく首を傾けて、「おかえり」と声を掛ける。
「あのさ、ウルカ」
そう言うと、彼はウルカに小さなアクセサリーを手渡した。細工が美しい、銀色のイヤリング。まばゆい輝きを持つそれは、ウルカの手の平で小さく光る。
「それ、プレゼント。付けてみて」
ウルカは一瞬戸惑ったが、ティオに言われるがまま両耳にぶら下げてみた。少しの冷たさが、耳たぶに伝わってくる。
「どうだ?」
ウルカが耳を見せながらそう尋ねると、彼は寂しそうな笑みを浮かべた。
「うん。やっぱり、似合うね」
その言葉は、まるで遠くの誰かを思い出しているようだった。




