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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
6-冬景色と追憶
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 寒さも一層極まり、世界中が年越しに向けて盛り上がり始めた。メレ国の大通りも例年通りに美しく装飾され、枯れた木々には可愛らしいモールが釣り下がっている。

 この時期になると、どの店も限定メニューを揃えるようになる。年越しというと、万人にとっての一大行事だ。信仰団体に所属している者もそうだが、一般人であろうとも気分が躍る。つまり店側としては、その心を狙っているのだ。


「ねぇねぇ、こんなケーキとかどう!? 超デカ盛りケーキ!! うひゃひゃひゃひゃ!」

「えーっと、材料費考えてないでしょ……」

 例に漏れず、双子の天使・チャイとユリネも、今年の限定メニューを考え始めていた。カフェに置かれたテーブルの上で、ああだこうだとアイデアをすり合わせながら、ピッタリのメニューを作り上げていく。

「あ、クッキーとか作ったらどうかな?」

 今年から新たに加わったシフォンも、負けじと提案をする。今ではすっかり雰囲気に馴染み、双子とともにカフェの運営に携わっている。

「クッキーだったら沢山作れるし、大通りで歩き売りもできるかも」

「歩き売り!? 楽しそー!!」

「わ、私もやりたい……!」

 中々の良案に、双子の黄色の瞳も輝く。今まで店で売ることしか考えていなかったが、あえて街に繰り出すという手もありかもしれない。

「何なら、クッキー以外にも色々作ろー!」

 ユリネはシフォンのアイデアにすっかり乗り気で、その場で小躍りしている。

「チョコレートとか……?」

「しょっぱいものもあるといいかもね」

 チャイの頭の中にも、三人でお菓子を作る姿が思い浮かんでいる。今年はいつも以上に、楽しい年越しになりそうだ。


「三人とも、盛り上がってるね」

 地下の隠し階段から上がってきたティオが、ユリネたちが盛り上がっているのを見て、にこにこと微笑んだ。白いパーカーという流行の服を身に纏った彼は、これからどこかに出掛ける様子だ。

「ティオ、どこかに行くの?」

 シフォンの灰色の瞳が、言葉とともにパチパチと動く。

「毎年恒例の、お祈りにね。別に入信してるわけじゃないんだけど、やっておかないと気持ち悪くてさ」

「ティオはね、年越しの時期になると、必ず教会に行くの……」

 チャイが小声で補足する。この街を拠点とし始めた頃から、ティオはメレの郊外にある大聖堂に足を運んでいるのだ。年に一回だけだが、信仰団体プレの信徒と同じように、神に向かって祈りをささげる。

「あ、そうだ。シフォン、ウルカが呼んでたよ。キニ国に行くから、付いてこいって」

「え? キニに……?」

 シフォンは小さく首をかしげた。キニ国に行く用とは、一体何であろうか。

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