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異世界「ざまぁ」代行業者  作者: 田中なも
5-追放、覚醒、そして誘拐
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23

「……そうだ。わたし、新しいパーティを探しに行かなきゃ」

 ……むくりと起き上がったノーシスが、突然そんなことを言い出した。まるで数年分の記憶が抜け落ちてしまったようなセリフだ。

「役立たずだって追放されて、ダンジョンで置き去りにされたんだった。でも、スキルが覚醒したから、もう問題ないよね。早く、新しい仲間を見つけなきゃ」

 うわ言を垂れ流しながら、フラフラと出口に向かうノーシス。彼女を見た他の人間も、次第に店を後にし始めた。

「私も、自分の街に帰らないと。お母さんが待ってるわ」

「そうだ、そうだった。ダンジョン攻略がまだ途中だった」

「記憶が曖昧だけど、とにかく早く行かないと。こんなところで、ボサッとしているわけにはいかないわ」

 次々と遠ざかる足音。いつの間にか、店内にはチャーナとイリアだけが取り残された。

「これって……」

 ――チャーナの頭の中に、ジークを連れ去ったエルフの言葉が蘇ってくる。『激しい錯乱と、記憶障害』とは、このことか。

「チャーナ、私たち、一体どうしちゃったの? 私、記憶がぐちゃぐちゃなんだけど、チャーナは覚えてる?」

 イリアのピンク色の瞳が、チャーナを見つめている。チャーナは一瞬、ドキッとした。これは、真実を知りたがっている瞳だ。

 ……しかし、チャーナの心はそれほど澄んでいなかった。洗いざらい話してしまったら、イリアは真実を思い出してしまうかもしれない。再び、ジークのことを求め始めるかもしれない。それが、どうしても怖かった。

「……私たち、このレストランで食事をしていたの。だけど、突然モンスターが侵入してきて……」

「……ああ、なるほどね。どうりで、戦った形跡があると思ったわ」

 イリアはそう言って、苦笑いを浮かべた。後ろめたさのある、チャーナの言葉。素直な彼女は、それを信じてしまったのだ。

「モンスターと戦ってノビちゃうなんて、私もまだまだね」

 彼女は服の裾を叩きながら、ぱっと立ち上がった。「あれ? 何、このエプロン」とは言っていたが、すぐに「ま、いっか」と軽く流してしまう。

「誰もいなくなっちゃったみたいだし、私たちも行きましょ。近くのダンジョンで修行するわよ!」

「あ、うん!」

 チャーナはイリアの言葉に頷いて、彼女の横を歩き始めた。まるで昔に戻ったかのように、自分の傍にいてくれるイリア。罪悪感を覚えつつも、チャーナはこの事実が嬉しく感じた。

(こんなことになるなんて……。あの二人組には、感謝しないとかもね)

 頭の中で感謝を述べるチャーナ。代行業者によって、隠された小さな復讐が果たされた瞬間だった。

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