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……しばらくすると、奥の角からイリアと金髪の青年が出てきた。オスカーとステラの特徴を上手く受け継いだような彼こそが、今回のターゲットであるジークだ。
彼らの後ろには、不思議な雰囲気を放つ小柄な少女がいる。大きな黒い瞳をパチパチさせながら、彼女は健気な様子で二人にくっ付いてきた。
「料理に混ぜた薬、ちゃんと効いたみたいね」
「ああ。そのようだな」
イリアの言葉に頷いたジークは、身に着けた調理人用の服を揺らしながら、ウルカとティオのいるテーブルへと近付いた。どちらも気持ち良さそうに目を瞑り、スヤスヤと寝息を立てている。
「これも、ノーシスのスキルのお陰だな」
彼は安堵した表情で、後ろの少女の顔を見遣った。彼に見つめられたことで、彼女は少し恥ずかしそうな顔をしている。
「……『予知』したから。このお客さんが、ジークのことを狙ってるって」
オリーブ色の髪の小柄少女・ノーシスのスキルは、直近の未来を「予知」するというものだ。彼女は今日の朝、ジークの身に危険が迫っていることを目視し、慌てて対策を立てたのだった。
「ジークが悲しむようなことは、絶対にさせない」
ノーシスは、はっきりとそう言い切った。パーティに捨てられ、行く当てもなく彷徨っていた彼女。それを救ってくれたのは、紛れもないジークなのだから。
「ありがとう」
ジークは彼女の頭を優しく撫でると、イリアの方へと向き直った。
「イリア、二階で待機している仲間を連れて来てくれ。この二人組を、遠征で近くに来ている騎士団に引き渡す」
遠征の騎士団とは、レオの都から辺境へ定期的に派遣される、貴族のお抱え騎士団のことだ。オルアン家の信用を得ているジーク。彼が事情を話せば、きっとしかるべき対応をしてくれるだろう。
「分かったわ」
イリアは大きく頷くと、螺旋階段の方へと駆けていった。ジークは彼女のポニーテールを眺めながら、騎士団に話す言葉を考え始めた――。




