第4話 諜報員DEET その4
あれからというもの、土人達も共通の言語を覚え、里との交易も活発になってきた。
ただ、殿が我々の厚意を中々受け取ってくれないところを除いてだが⋯⋯。
我々森人としては可能ならば昔と同じ、我々の象徴としての天皇に着いて頂きたい。しかし、一方的な施しと受け取られてしまう取引は頑として首を縦に振っては貰えないのだ。
里の迷い人招聘の機運も高まっている。
その期待は全て私の双肩にかかっているのだ。
「師匠! どうすれば私もその技術を会得できるのですか?」
「師匠?⋯⋯どの技術でしょうか?」
頬に手を当て小首を傾げるエメリーヌ師匠はいつもふわりふわりと十全な答えを返してはくれない。ここから我が身も省みるような禅問答が始まるのだ。
「Vストリームアタックを伝授していただきたく!」
「Vストリームアタック?⋯⋯それが貴女の叶えたい希望なのでしょうか?」
「それで殿を調伏している師匠を陰ながら拝見させて頂きました! 是非ともその御業を!」
「⋯⋯貴女はあの御方を調伏したいのですか?」
「はい! あの御力に勝てる技術を!」
目を瞑り、溜め息を吐く師匠。
「⋯⋯男女の秘め事は、勝ち負けではないのです」
女の私でもドキリとする様な哀しげな表情を浮かべて師匠は言った。
「私の身体は呪われているのです。勝手に快楽を貪ろうとし、殿方を蹂躙してしまう呪いに⋯⋯」
「⋯⋯そ、そんなことは」
「いいえ。今は亡き前夫に言われました。お前のディルドではないと」
「⋯⋯なんと⋯⋯」
「殿方には、雄として女性を組み敷きたい欲望が在ります。しかし、私の身体はそれを叶えてあげられません。一方的に極限まで搾り取ってしまうのが私なのです。呪いと言わず何と言えましょう」
「で、でも、殿は⋯⋯」
「あの御方は素敵な御方。それも良いと言ってくれます。しかし男である以上、同じ欲望は在るのです。貴女にまで同じ道を歩んでは欲しくありません」
「⋯⋯なっ⋯⋯ならば私はどうすれば」
「蹂躙されなさい」
「⋯⋯えっ?」
「蹂躙されるのです」
「あっハイ」
何となく良いように言いくるめられた気もしたが、上司である若様を通じて里の長にもエメリーヌ師匠が森羅房中術秘奥義Vストリームアタックの使い手である事と、蹂躙されるべきと勧められた事を共有し、今後の方針を確認したところ蹂躙されるべしとの返答が返ってきた。
襲うのではなく、誘い受け指令。
更に高難度ミッションとなってしまった迷い人との絆作り。
我々、森人忍部隊森羅は遂に伝統あるミッション「ラッキースケベ」を発動させるのだった。