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58. とばっちり事変


軽傷の帝国兵に話を聞いたところ帝国兵二百のうち半数くらいが元王国の国軍兵、もう半数が元王国貴族の私兵だったらしい。名ばかり帝国兵だ。


帝国から来ていたのは3人の修道士と離れた所で観察していた2名の軍監のみだそうだ。軍監たちは爆撃を逃れ、撤退済みだ。


捕らえた軽傷の兵達も元王国兵で捕虜としての価値は薄かった。重傷者と同様にこちらも釈放する事にする。


どうやって捕虜を返そうか考えていると良いタイミングでガロスが馬に乗ってやってきた。


「シュウ。今大丈夫か?」


「大丈夫だ。丁度良かった」


休憩所まで案内する。


「捕虜を引き取って欲しい」


白湯で喉を潤しながらそう切り出す。


「まぁ待て。それどころじゃねぇんだ」


うん?どうした?


「お前さんがガッツリやらかしたお陰で反領主勢力がイキりだしてな。今じゃ敵対した領主を打ち倒して魔王に恭順すべき!だとよ。アレのどこが八百長で暗殺だ?」


「いや⋯⋯何かすまんな」


「兵役の連中も武器持つとすぐコレだぜ⋯⋯」


頭痛いな。元々領民の忠誠度低いもんな⋯⋯。


「こんな言い方は卑怯だが⋯⋯ケツ持ってくれ。マックス様とダンダム傭兵団はマガラに亡命したい」


お⋯⋯おう。そうきたか。


「⋯⋯解った。受入れよう」


「助かる。もうやってられん!」


プンプンしながら帰って行った。ガロスも苦労してんな⋯⋯。


そして再び捕虜の扱いは宙に浮いた。



◆◆◆◆◆



結局、捕虜達には森人集落から仕入れたポーションを飲ませて自力で帰還してもらった。持たせてやった食料代まで含めると何たる赤字か。折角の俺の利益が飛んだではないか。戦争とは何と不毛な行いなのか。


帰還兵達には、次攻めてきたら皆殺しだマジでと言い含めておいたマジで。金返せ。


ひたすら迷惑掛けやがって帝国め⋯⋯。



「シューイチ?ガロス来た」


イライラしながら腹いせに魚釣りしてたらサーラちゃんが呼びに来てくれた。サーラちゃんはむさいおっさんにも慣れつつある様だ。


いつもの休憩所に向かうとマックスとエメリーヌ、団長とガロスが待っていた。


「待たせたか?」


「マガラ様。この度は私どもの受け入れ、誠にありがとうございます」


憔悴したマックスが膝をつき、こうべを垂れ礼を述べた。


「大変だったな。ここには幸いエメリーヌも居る。田舎なのでダンダムの様にはいかないが安心して過ごすといい」


「ははーっ」


「あなた様⋯⋯ありがとうございます」


エメリーヌの母親の顔は久し振りだ。エロオーラを抜くとどこか凛々しい。


「エメリーヌ。マックスに村を案内してやってくれ」


「承知いたしました」


エメリーヌとマックス、そして何故かサーラちゃんもまるで私がお姉さんだみたいな顔で付いて行った。


「無事だったか?」


「あぁ⋯⋯何だか久しいな」

団長もやつれている。急に老け込んだみたいだ。


「まずはゆっくり休んでくれ」


「その前に⋯⋯入ってくれ!」


3人の男が入室する。知らない顔だ。


「⋯⋯ダンダムは自治都市となりました。この者達がその代表です」

口調を変えて団長が言った。


またダンダムが陥落していた様だ。マックスがあれ程凹んでいる訳だ。


自治都市の代表とやらは友好だの何だのと中身の無い話をしていたが、こちらが攻める気が無いと知ると満足そうに帰って行った。魔王に恭順すべき!とかはポーズだったのだろう。ガロスは空気に擬態してた。



後日、ダンダムの商人達からは血で血を洗う抗争劇が未だ続いているとの話が聞け、避難民の受け入れ可否を尋ねられる事になる。


⋯⋯人の統治って難しいね。


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