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35. 俺のヒロインを返せ


昨日は宿に戻った後もネチョネチョ魔素殻をいじっていたら面白い性質が分かった。



衝撃を与えると固まるのだ。



ご存知だろうか?ナンチャラ科学実験とかで片栗粉を溶いた水の上を走ったりする光景を。


所謂、ダイラタント流体である。



これは衝撃を吸収できたはず!



「ダイラタントシールドッ!」


伸ばした右手の掌からドロドロと透明な魔素殻が流れ落ちて行った。



右手を頭に乗せ再び叫ぶ。


「ダイラタントシールドッ!」


再びドロドロと透明な魔素殻が額を伝い流れ落ちて行った。


全てが流れ落ちるまで、僅か一分。


意外と気に入った厨二ネーミングだったダイラタントシールドは、マナ感知と俺の記憶から存在を消失した。




不貞寝して早起きした俺は市場を冷やかしていた。


まだ金貨もあるせいか、それともボッタクリ相場なダンジョン街にいたせいか妙に相場が安く感じる。


しかし金があっても辺境の地だからか欲しい物もあまりない。物流もあまり良くないのだろう。食料品も保存がきく物ばかりだ。


サーラちゃん売られてないよなと内心ドキドキしながら奴隷市場まで足を延ばしてみたが相変わらず売り物には女性がおらず安堵した。



「ず、ずいまぜん。ごめんなざい」


妙に甲高く聞き取りにくい謝罪の声と殴打の音が響く。


人垣をかき分けて近づいてみると亀の様に縮こまって蹴られているゴブリンと複数の男達がいた。


ゴブリンに触れられたとかどうしてくれるんだとか店主らしき人物に詰め寄る男と、ゴブリンに蹴りを入れる男が騒いでいた。格好からして兵士か何かだろう。


集まる人達に気が付くと唾を吐きつつ二人は行ってしまった。


「そのゴブリン。言葉が通じるのか?」

弱った顔をしたままのの店主に尋ねる。


「へ、へぇ。少しだけ話ができますでさ」


「いくらだ?」


「首輪と足枷付けて大銅貨1枚でさ」


手枷足枷などの拘束具を付けていれば亜人奴隷も連れ歩いてもいいらしく、一緒に購入する事になった。手枷足枷の方が値段のウェイト大きそうだけど。


あ、今回は衝動買いじゃないよ。話ができるゴブリンさんなら開拓村でも役立ちそうだし⋯⋯って、おいこいつ左腕無ぇじゃねぇか!


振り返ったが人波にまぎれたのか既に奴隷商人の姿は消えていた。スゲー狐につままれた感。


「⋯⋯シュウだ。よろしく頼む」


「⋯⋯ダ、ダリだす。買う、ありがどうごぜます」

赤褐色のゴツゴツとした肌に吊り上がった琥珀色の三白眼、大きな鼻と耳を持つどこから見ても異人種なゴブリンさんのダリは、意外な事に奴隷として購入した事にお礼を言った。



⋯⋯も⋯⋯もしかして。


「女か?」

ジェントルな俺はメスか?とは聞かなかった。



「そうだす。違い、分かる、流石が主様だぁ」

奇妙に発達した犬歯を覗かせながら甲高い濁声が返ってきた。




⋯⋯これはもしかして奴隷ハーレムルート。



⋯⋯これが異世界テンプレの運命力。



⋯⋯難易度高ぇ⋯⋯。



滲んだ視界で空を見上げ、溢れてきた涙を堪えながら俺は日本語で叫ぶ。


『俺のヒロイン枠を返せ!』



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