11. ボッチの日常
開拓村の朝は早い。
夜明けと同時に目を覚まし、木桶を持って水汲みに向かう。
木桶だけでもそれなりに重量があるのだが、連日の水汲み筋トレにより水を満載にしても楽に運べる様になった。
1人しかいないので2ターンで終わる。
1ターン目の水は洗い物と湯沸し。火は手斧の背と石で火打ちして着ける。
2ターン目の水はもう1つの木桶に灰を突っ込んで掻き混ぜ灰汁を作る。灰は洗い物にも使えて大活躍だ。
灰の沈殿を待つ間に白湯を啜り、最近の主食である葦の芽の採取を行う。柴刈り済みのエリアだけでもかなりの数が採れるので非常に助かる。
「美味い」
皮ごと焼いて塩を付けて食べる。根曲竹みたいな味で香ばしくて結構好きだ。
残りは置いておくとアクが強くなるので灰汁に漬けてアク抜きしておく。食べられる野草も一緒にアク抜き。
飯炊女バータはアク抜きとか全くしてなかったのでたまに吐き気とか具合悪くなる事があった。何よりアク抜きしないと味が不味い。
「今日のもダメか」
大きい器と言えるものが木桶2つと鍋1つしかないので素焼きの土器も試行錯誤しているがなかなか上手くいかない。焚き火の下からはガラクタしか出てこない。
葦みたいのが生い茂ってるから湿地に近いのかなと考えてたけど、やはり穴掘るとすぐ粘土層になったので粘土には困らない。開墾して何の作物作る予定だったのだろうか。米か?
アクにはタンニンが含まれてた覚えがあるので革鞣しが出来そうな気がする。向こうからやって来てくれる毛皮を纏ったお肉さんである狼を仕留めるのが新しいミッションだ。
毛皮を敷き物にしたいなぁ。蛮族風ファッションもいいなぁ。夢が広がる。
昼休憩を挟み、葦を刈る。
地下茎が凄くて畑にするのは難儀しそうやなー。
葦藪は全部刈り尽くすより外周を残して柵のエリアを増設しようと考えている。今の柵も下手に補強するより外側に柵を新築した方が良いかもしれない。第1防衛ラインだ。
この辺は来るか不明な見回り役への露骨なアピールだ。
「人間の支配エリアを拡げられるもん!1人でできるもん!」
早目の晩飯(野草と葦の芽スープ)を摂り、日暮れまでは投石用の小石を集めたり、投槍器(アトラトル風)を作ったり、投槍練習をやっていたりと武装の時間にあてている。
投石用のスリングは木のツルでは耐久性が厳しかった。木の槍を量産する方が難易度が低い。
投槍器も木の枝を加工しただけの物なので、捻れとかがあり真っ直ぐ飛ばすのが意外と難しい。
まぁ、柵に足場作って上から攻撃するなら狼さんとかゴブリンさんなら充分な攻撃力だろう。
うーん。でも投槍器だと投げ下ろしは難しいかも知れない。
とは言え柵の内側から柵の間を抜く様な精度もないしなー。練習したら出来る様になるんかな。
知識チートも中々実用に耐えられるものが少ない。投槍に塗る毒欲しいなー。
あ、そういえばホースラディッシュは見つけた。西洋ワサビ。
これを目とか鼻とか口にブチ込めれば効果ありそうなんだけど射程がなぁ⋯⋯。5メートル以内に近付きたくないんだぜ。
日が落ちると瞑想のお時間。
魔法はきっとある!ファンタジーを諦めない!
こっちの世界に来てから夜は暗くて暇なので色々試してはいた。厨二詠唱してみたり呼吸法を意識してみたり⋯⋯
よくある体内の血管をマナが流れるイメージってなんやねん!赤血球にでも転生した事あんのか?そんなんできるかっ!ってツッコミを入れた夜もありました。
⋯⋯試行錯誤の結果、マナ的存在があると断定しました。今後マナと呼ぼう。
最近ようやく知覚できたり動かせる様になってきたけど、ヘソの所は腸の流れに沿ってグルグル回転するイメージで下丹田で何かが起き上がってくる感触。
胸の真中の中丹田付近は90度ズレてて前後上下で回すイメージ。
ある程度、起きたらメビウスの輪の様に捻れた8文字で練る雰囲気。結構疲れる。
ただ、集めたマナを手とかに移動させた所で身体強化される訳でも火の玉が出せる訳でも無い。
やっぱり気の球も出ない。誰も元気を分けてくれない。
イメージ力⋯⋯もとい妄想力が足りないのか⋯⋯?
ちなみに上丹田もあるんじゃね?今度は水平方向で決まりでしょ?って勿論やってみたよ。
うん。結果は推して知るべし?