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最初の一歩

目の前には何台ものテレビカメラ。普段はテレビの奥で見るような芸能人たち。そして数えきれないくらいの視聴者の視線が、今私へと注がれている。



ああ、どうしてこんなことに。私が何かあの子達の気に触るようなことでもしてしまったのか。


いや、今はそんなことを考えている時ではない。まずはこの状況をなんとかしなければ。


司会者の調子いい言葉がきこえる。

「歌声自慢大会、続いてはエントリーナンバー20 菜子さんです!さあ歌ってもらいましょう、『君と僕が生きた時間』!」


バラード調の音楽が流れ始める。よかった、かろうじて聴いたことのある曲だ。


少し震える手をマイクに伸ばし、私は大きく息を吸いこんだ…―――

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