9話 憤怒
地響きのような唸り声をあげて立ち上がる天使。
「硬いな」
悔しそうに弘佑が言う。
「諦めるな、効いてるのは間違いねぇんだ!行くぞ!」
再び走り出す十葵達。
「だぁあら!」
拳を天使の腹部に直撃させる弘佑。
「はあぁ!」
太刀を回転させて天使に斬撃を食らわせる翔太。
「いい加減、寝てやがれ!」
空中に飛び上がり、斬撃を降らせる十葵。
天使の体に無数の亀裂が入り、ナナメにズレる。
不気味な叫び声をあげて倒れていく天使。
そして、一度ビクッと震えたあと、光の泡となって消滅した。
「……つ、疲れた」
天使が消えたのを確認すると、地面にへたり込む翔太。
「いやー、さすがに疲れたな。うん」
一人で納得するように頷く弘佑。
「とりあえずこっちは終了だな」
十葵が楓に電話で萌佳達の状況を聞くためスマホを取り出すと遠方で爆発が起きる。
「な、なんや!?」
「おいおい、あっちって……」
「……萌佳!」
思わず走り出す十葵。
「な、ちょい!十葵!」
「待てって!」
慌てて追いかけてくる翔太と弘佑。
二人の静止も聞かず、走り抜ける十葵。
そして、萌佳達の前に現れた彼は驚愕の顔になった。
「む、まだ動ける者がいたか」
そこに居たのは倒れた風羽や結依を空中から見下ろす一人の男だった。
しかし、十葵が一番驚いたのはそこじゃない。
萌佳が、彼女が片手で首を絞められていたからだ。
「テメェ……!」
全身の血が沸騰するような感覚。
絶叫してもまだ足りない。
暴れ回っても、物を破壊しても。
全然足りないほどの、怒り。
「萌佳を離せ!」
地面を蹴り、一気に男の目の前まで跳ぶ十葵。
「だ、め……にげ……」
萌佳が苦しそうに何か呟いたが、十葵の耳には届かない。
「だぁら!」
腕を振って大鎌を振り上げる十葵。
しかし。
「ふむ。ずいぶん幼稚な攻撃だな。怒りに任せて芯もぶれている」
空いた方の手でいとも容易く受け止められる。
「はぁ!」
もう一度試してみるが、結果は同じ。
男に傷一つ付けることもなく、防がれる。
「邪魔だ」
十葵に手をかざす男。
すると、十葵の全身に衝撃が走り、地面に叩きつけられる。
「がぁ!」
「さて、そこの二人はどうするかな?」
絶望を引き連れた目で、男は翔太と弘佑を見た。
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