5話 危機
「な、なんか、扉一枚隔てて向こうに女子の部屋があると思うと変に緊張してまうな」
翔太が自分のベッドソファーの上で布団を抱きしめて緊張を落ち着かせていた。
「つっても、女子らは自室で、俺らはリビング生活だけどな」
弘佑が少しだけ羨ましそうにため息を吐く。
「まぁ、これまでの部屋よりも大きいし、好きな時にキッチンを使えるのもありがたいじゃないか。さらに景色も最高とくれば、それ以上望むのは無理かもな」
「まぁなー」
十葵の言葉に弘佑も頷く。
「でも、昼間はホンマににビビったな。あんなバケモンと戦うハメになるなんて」
翔太が少し落ち込んだ声で呟く。
そのことでリビングにちょっとした沈黙が流れる。
「……ま、考えても仕方ねーさ。さて、俺はエロゲーでもするかなーっと」
弘佑は寮から送られてきた大量の荷物の中からエロゲーが詰まったダンボールを開封する。
「んじゃ、俺はシャワー浴びてくるか」
寮から送られてきた大量の荷物で埋め尽くされた広い部屋を歩く十葵。
とりあえず、奥に押しやるだけでも片付けようと考えながら部屋を出る。
階段を降り、プールのシャワー室へ向かう。
脱衣所で服を脱いでシャワールームへ入ると。
「ん?シャワーの音がするな」
この時間は大学には人はいない。
そのタイミングでシャワーの音がするということは。
「天使か……!」
警戒しながら進む十葵。
そして、勢いよく飛び出すと。
「きゃあ!」
「へ?萌佳!?」
裸の萌佳がシャワーを浴びていた。
いや、シャワーを浴びる時は裸は当たり前なのだが。
「なんで、お前がここにいるんだよ!」
「それはこっちのセリフ!ここ女子シャワー室!」
しゃがんで身を隠す萌佳。
「え?え?」
よく思い出してみると間違えた気がする。
それに壁などのタイルもピンクで女子っぽい。
「とにかく出てけー!」
お湯をぶっかけられる十葵。
「す、すまーん!」
大慌てで戻ろうとする十葵だったが。
「でねでね!」
「うん」
「げ、やば!風羽と結依だ!見つかる!」
「あーあ、変質者確定ね」
体にバスタオルを巻いた萌佳がニヤニヤとからかってくる。
「そ、そんなー。どうしよう!」
「……もー、仕方ないなぁ」
半泣きで慌てる十葵を引っ張る萌佳。
二人は一つのシャワールームに二人で入る形となった。
そしてお湯を出して、萌佳だけが入ってるように装う。
戦闘とは別の危険なミッションが始まろうとしていた。
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