40話 希望
戦闘を行う十葵達。
「おいおい、何か数が多いぞ」
弘佑が無限とも言える数で近づいてくる天使の集団を見て呟く。
『基本型』は山ほど湧くが、一体一体は強くない。
しかし今回は『巨人型』が十体ほど見える。
「あんな数、どない対処すればええねん。十連コンボや壁ハメなんて持ってないで」
翔太が困ったように声を出す。
「だから属性がある」
結依が翔太を励ますように声をかける。
「……天使がやけに多い。それに楓先生のあの態度……」
全員が戦いに集中する中、十葵は別のことに思考を巡らせていた。
そして、再び高速を飛ばして大学に戻ってきた楓。
インエンから聞いてはいたが、平日の大学でここまで静かなのはやはり慣れない。
早足で大学奥のインエンの研究室へ向かう。
扉をノックすると、相変わらずの陰鬱な声が入室を許可する。
「やあ、上手く彼らを遠くへ追い払ってくれたようだね。能力者にはこの催眠は効かないからな」
彼らとは十葵達の事だろう。
「ええ。今、この大学で起きているのはあなたと私だけよ」
「ふふ、そうかそうか」
満足そうに笑うインエンに楓は口を開く。
「一つ聞かせてちょうだい。貴方達天使は人間を襲って何がしたいの?」
「ずいぶん無粋な事を聞くのだね?」
「協力してあげたんだから、それくらい聞く権利はあると思うわ」
クスッと笑う楓。
「……まあ、いいだろう。人間には強い想いがあるだろう。いわゆる『感情』と言うものが」
「ええ」
「しかし、我々天使にはそれが理解出来ん。我々も感情があるように見えてはいるだろうが、これは組み込まれたプログラムに近い。いわゆる、演技なのだよ。本来我々は、君達が『基本型』や『巨人型』と呼ぶ天使と同じ、感情らしい感情はない。だからこそ、人間を破壊しても調べても結果のわからぬ『感情』が気になるのさ。だから、人間を吸収して『感情』を知る。それが目的なのだよ」
愉快そうに顔を歪ませて笑うインエン。
「……そう」
「そういう訳だ。さあ、私は能力者の彼らが戻ってくる前に用事を済ませなくては」
そう言って研究室を出ていこうとするインエンの道を塞ぐ楓。
「おや、どうかしたかね?」
「貴方達に感情なんて芽生えないわ」
「……なに?」
そして、顔を上げた楓の表情は怒りに震えていた。
「人間を傷つけて!いえ、誰かを傷つけて得るものに!価値なんてありはしない!」
そう叫びポケットに忍ばせていたスイッチを押す楓。
すると、研究室内に強力な磁場が発生する。
「ぐぉ!」
咄嗟のことで耐えきれずに倒れ込むインエン。
「ぐっ。き、さま……!」
「いくらこの世界とは違う存在とはいえ、中身が機械なら磁力が効くんじゃないかと思ったけど……正解のようね」
あまりの磁気のせいで楓自身も苦しそうだ。
楓の鼻からは血が流れる。
「く、ククク。どうした!このままでは貴様も自滅するぞ!」
苦しみながらも愉快そうに笑うインエン。
「ええ。最初から『勝つ』気なんて無いわ。私の命と引き換えに人型天使一体を倒せるなら……安いものよ!」
「なに!?」
苦しそうに拳銃を取り出し、インエンに向ける楓。
しかし、楓は気づいていない。
インエンは苦しみながらも、楓の背後から浮かせた三又の槍で狙っていることを。
「……終わりよ、インエン」
「クク、終わるのは貴様だ……楓ェ!」
お互いが発射しようとした、その時。
「人生諦めんのは早いで。楓先生!」
どこからともなく翔太の声がする。
さらに、次の瞬間。
「だぁらあ!」
壁や窓ガラスをぶち破り、弘佑が飛び込んでくる。
「ぐぁ!」
弘佑は勢いあまり、インエンを殴り飛ばして地面を転がる。
壁が破られ、密室でなくなった事により、強力な磁場も解除される。
「あ、あなた達……どうして!」
驚く楓。
その体を十葵が支える。
「楓先生、助けに来たぜ!」
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