39話 暗雲
翌日。
大学も、この日最後の授業を終える時間になっていた。
「つまり、非科学現象も起きる可能性というのは大いにあり」
教授として淡々と授業を進めるインエン。
「おや、もうこんな時間か。では、そろそろ講義を終わろう」
学生達が伸びや片付けを始める。
「それでは、今宵の宴まで……ごきげんよう」
インエンが普段は見せない、本来の不気味な笑みを学生達に向ける。
そして、手を叩くと教室は眠りに包まれる。
インエンが指を鳴らすとカーテンが一斉に閉まり、ドアに鍵がかけられる。
大学内すべての学生達が眠り、閉じ込められていた。
「クク、上手くやってくれよ。楓先生」
一方。
十葵達は楓の運転で、高速を走っていた。
「せっかく府外へ出るんだから、用が済めば遊んで帰ってらっしゃい」
楓がニコニコと十葵達に話す。
「お、マジで!?いいんすか!」
弘佑が嬉しそうにガッツポーズを決める。
「ええ、大学には上手く言っておくわ。命懸けで天使を撃退してるんだもの。それくらいのご褒美は当たり前よ。萌佳ちゃん、私のカバンに封筒が入ってるから、それを使ってちょうだい」
「楓先生、さすがー!」
風羽も興奮したようにバンザイする。
「いやー、さすが楓先生。話がわかるでー」
翔太がドカッとシートにもたれる。
「おいおい。遊びもいいけど、まずは天使だろー」
「その通り。ちゃんと気合い入れ直して」
十葵と萌佳が注意する。
しばらく走っていると、遠くに異常な光景が見えてくる。
「よし、みんな行くぞ!」
十葵が全員に号令をかける。
「それじゃ、みんな頑張って。今日はゆっくりしてらっしゃい」
車から六人が飛び降りたのを確認すると、楓は猛スピートで引き返していく。
「相変わらずの運転技術やな」
翔太が苦笑いして消えていく車を眺める。
十葵も同じように走り去る楓の車を見つめていた。
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