38話 裏切
「よく来てくれた、楓先生。この前の『巨人型』は如何だったかな?」
陰鬱な男は気味の悪い笑みでそう尋ねてくる。
「ええ。とても素晴らしかったと思うわ」
楓はニコリと笑って男に同意する。
「ククク、やはり君は中々良い目を持っている」
満足そうに頷く陰鬱な男。
「それで?どうして私をここへ呼んだのかしら、インエン」
インエンと呼ばれた男は、さらに気味の悪い笑みになって話し出す。
「いやいや、楓先生。君の協力のおかげで我々『天使』はさらに高みへと登ることが出来る。あの能力者の青年達が天使を倒せば倒すほど、私の元にデータが集まり、さらに強力な天使を作る事が可能なのだ」
どこまでも冷静にして冷酷な声で話すインエン。
「そう。お役に立てて光栄だわ。まさか十葵くん達も人型天使が大学内に居るとは思わないでしょうしね」
「まあ、ここまで人間社会に溶け込める天使は私と『もう一人』くらいのものだ。やはり私は他の人型よりも優れている。天使の強化や人間社会への順応。どれをとっても優秀だ」
ニヤニヤと、暗い表情を歪ませてニヤけるインエンはまさに不気味を通り越して嫌悪感を感じるほどだ。
普通の人間なら恐怖で倒れてしまうだろう。
しかし楓は表情一つ変えない。
まるで、人間らしい生気というものが無いのではないかと思ってしまうほどにインエンの協力者、天使の協力者として完璧な態度だった。
「明日。この大学から遠く離れ、府を越え隣の県に天使を召喚させる。能力者の彼らが全員出払った所で、私がこちらで暴れさせてもらおう。例え、私に気づいても向こうで天使を倒し、疲れて戻ってきた彼らなど敵ではない。あぁ、安心したまえ楓先生。君は生かしておいてあげよう。なにせ私の助手なのだからね」
「ふふ、それはよかった。インエン、あなたの作戦楽しみよ」
インエンに賛同するように、『相談室』のある建物に向かって黒い笑みを向ける楓。
そんな天使が潜んでいるとは夢にも思っていない十葵達は夕食の片付けをしながら騒いでいる。
明日。
再び天使が現れる。
インエンは、待ちきれないとばかりに席に座り、黒い笑みで虚空を見つめる。
「それじゃ、私は怪しまれないように彼らの所へ戻るわ」
そう言ってインエンの研究室を出る楓。
メガネは光で反射して表情は読み取れない。
ただ、最後にポツリと黒い笑みを浮かべたまま、楓は言った。
「ごめんなさいね、萌佳ちゃん。十葵くん……みんな」
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