30話 時間
「これは……」
驚きで固まる十葵。
「まさか……『時』の属性?」
萌佳が震えるように声を出す。
「『時』の属性?」
十葵が萌佳へ聞き返す。
「炎や風と違って物質的な物ではなく、概念的な属性のこと」
萌佳が信じられないというように話す。
「私も当たり前だけど実際に見るのは初めて。それだけ、まず有り得ないものだから」
「と、とにかくめちゃめちゃスゴいってこやな!」
「そんなレベルじゃない。物質と違って概念は人間が操作出来るものじゃない。これは……神の御業」
「十葵、すごいよ!」
「よっしゃあ!残りの天使も狩りまくるぜ!」
嬉々として残りの天使討伐を開始する弘佑と風羽。
「俺らも今がチャンスやで!」
「確かに」
翔太も結依と討伐を再開する。
ポカンと立ちすくむ十葵。
「十葵……アンタ」
萌佳が心配そうに彼に抱きつく。
「……萌佳?」
不安そうにしがみつく萌佳の頭に手を置く十葵。
「何だかアンタが、十葵が遠くに行っちゃいそうで怖いよ」
「はは、俺のことは怖くないんだ」
わざと冗談っぽく笑う十葵。
「当たり前じゃん!自分の好きな人を怖いなんて思わないよ」
悲しそうな顔で十葵を見上げる萌佳。
そんな彼女に十葵は、優しく微笑む。
「大丈夫」
「え?」
そして、十葵は右腕で萌佳を抱きしめ、左手の大鎌を横に一閃。
背後で槍を突き出そうとした基本型天使が真っ二つに裂けて消滅していく。
「俺は萌佳の前から居なくなったりしない。約束だ」
ニコッと笑う十葵。
返事はなかったが、萌佳は甘えるように十葵の胸に顔を埋める。
「今日は特別だぞー」
萌佳を抱きしめたまま地面を強く蹴る。
空中を跳ね回りながら天使を次々と消滅させていく十葵。
そして、天使達が一斉に光の泡となり、天へと昇っていく。
「あ……」
それは息を呑むほどに美しく、空中で眺めている十葵と萌佳は、まるで光に包まれているかのような錯覚に陥る。
「綺麗……」
「萌佳」
光に圧倒されていた萌佳は、自身の名前を呼ぶ十葵の声に驚く。
「俺は萌佳が大好きだ。だから、どこにも行かない。俺たちは……ずっと一緒だ」
「うん!」
頷いて抱きしめ合う二人。
「アイツら、特等席やなー」
「あれほど幸せそうな萌佳。初めて」
「弘佑!抱っこー!」
「おっしゃあ!」
結依と風羽も、パートナーの男性に寄り添う。
幸せな気持ちに包まれて、六人は現実世界へ帰っていった。
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