25話 本来
大学内の自宅に戻ってきた六人。
「なるほど、『獣型』も出てきたのね。記録しておくわ」
「よろしくお願いします」
楓に頷く萌佳。
「そういえば、萌佳達ってなんつーか……対天使組織の人間なんだよな?」
「ん、違うけど?っていうか、なにそれ。組織とか厨二病?」
「え!?」
さらりと否定する萌佳に驚く十葵。
「私達は別に所属があって、世界平和や正義の為に戦ってるわけじゃないわ」
スマホの操作を終えた楓がニコリと笑いかけてくる。
「え?でも、最初の頃この地域担当とかって……」
「あぁ、それは言葉のあや。私たちみたいに能力者は他の地域にもいるだろうから、結依はこの地域担当って言っただけ」
「うん。正式には私たち以外に能力者がいるかも怪しい」
「そ、そうなのか……」
改めて現状を知り、唖然とする男三人。
「そういえば……俺らは萌佳に能力をもらったけど、女子達の中で最初の能力者って誰なんだ?」
「私たち三人は同時に能力解放。けど、私達の知る中で能力者一人目は楓先生」
「え!?楓先生って能力者なん!?」
「マジかよ!?」
翔太と弘佑が驚いて楓の方を向く。
「もう昔の話よ」
少し寂しそうに楓が笑う。
「楓先生は私たちに力を与えたせいで能力者じゃなくなったの」
「私たちを助けるために自分の力を失った」
「うぅ……ごめんね、楓先生」
女子三人が申し訳なさそうに下を向く。
「あなた達のせいじゃないわ。私自身が選んだ事なの。むしろあなた達も巻き込んでしまって申し訳ないのはこっちよ」
「そんなことない!私たちは楓先生のおかげで無事だったんだから」
「どういうことだ?」
弘佑が萌佳達に尋ねる。
「私が十葵に力を与えた時と同じ。私たちは天使に襲われかけてた。その時に楓先生が助けてくれたの」
「それでも楓先生一人では処理しきれない数だった。そして再び私たちはピンチになった」
「その時に、楓先生が自分の全能力と引き換えで私たちに力をくれたの!」
「なるほどな」
「だから、天使に関わった事のある私がみんなの支援係をさせてもらってるのよ」
「ほへー。ほな楓先生は誰から力をもらったん?」
「私の友人よ」
「お、んじゃその友人さんはまだ戦ってるのか?」
「いいえ。もう戦っていないわ」
「……ケガとかじゃなさそうだな」
「ええ。天使に……やられたわ」
全員に沈黙が訪れる。
理解はしていた。
けれど、どこか現実離れしたことに認めたくない自分たちがいたのだ。
「だからこそ、私はあなた達に勝ち続けてほしいの。こんなことに巻き込んでしまったことは謝罪してもしきれない。けれど、だからこそ精一杯フォローはさせてもらうわ。もう、お別れはごめんよ」
ふふ、と優しく笑う楓。
友人との別れは酷くつらく、悲しいものだっただろう。
だからこそ、楓にとって十葵達は自分より大切な存在なのだ。
「俺らは居なくならねぇよ」
「え?」
「俺らは……最強の六人だからな」
楓に笑いかける十葵。
「なにそれ」
ふふ、と笑う萌佳。
それにつられて笑いの渦に包まれる。
「ええ、信じてるわ」
先程まで疲れたように笑っていた楓の、本当の笑顔を見れた気がした。
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