21話 月夜
「今日はホントにありがと」
「ぜ、全然ええよ。背中、もう痛ない?」
「うん」
コクリと頷く結依。
「そ、そっか。ならええねん」
しばらく沈黙が続く。
「翔太。無理してる?」
「え?」
「なんだか、無理やりテンション上げてるみたい」
「そ、そんなことはないで!どっちかと言うと……緊張、してる」
モジモジとする翔太。
「緊張?」
「結依みたいな、可愛い人と二人きりやし……」
「可愛い?私が……?」
急に顔を真っ赤にする結依。
お互いに黙ってしまう。
「お、いいぞ。翔太、先制攻撃だ」
隠れながらボソボソと呟く十葵。
「負けるな、結依。反撃反撃」
萌佳も陰から応援するように呟く。
「私は、可愛くなんてない」
「可愛いよ!俺はそう思う!」
立ち上がって叫ぶ翔太。
ポカンと結依が見上げる。
翔太も叫んでから気づいたのだろう。
恥ずかしそうに腰を下ろす。
「……俺は、そう思うから」
「ありがとう。翔太に言って貰えてちょっと自信ついた」
照れたように微笑む結依。
「お、いいぞー」
「頑張れー」
陰からコソコソと応援する十葵と萌佳。
「あ、あのさ!」
「は、はい!」
「俺!今回のことで……結依が」
緊張したように唾を飲む翔太。
結依も潤んだ瞳で翔太を見つめる。
「結依の、ことが……」
「うん……」
「と、とっても大事やなと思ってん」
かなり逃げた告白になる翔太。
「うん。私も、翔太の事すごく大切」
「あ、ありがとう!あはは……」
大げさに笑う翔太。
「逃げた」
「まぁ、いいんじゃねーの。人それぞれスピードは違うさ。翔太と結依はゆっくり近づいていけばいいんだよ」
ふ、と視線を翔太達から逸らす十葵。
「あれ?もう行くの?」
慌てて萌佳も追いかけてくる。
「あぁ、あんまし覗いてても悪いしな。といっても、かなり見てたけど」
自嘲気味に笑ってトイレに入る十葵。
「萌佳も早く寝ろよ」
「アンタこそ」
萌佳も微笑んで、女子トイレに入っていく。
ガラス張りの休憩室。
月明かりが翔太と結依を優しく包んでいた。
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