2話 覚悟
「あ……」
もうダメだ。
そう思った。
しかし、気がつけば自分たちは真っ白な空間に居た。
「あれ?」
「ここって……天国か?」
「マジで?と、とりあえずお前らと一緒でよかった」
三人がなんとなく痛みがなかったことに喜んでいると。
「まだ死んでないよ」
急に声がする。
その方向を見ると、先程十葵を呼び止めてくれた女性が立っていた。
「ここは……簡単に言えば精神世界かな。斧が当たる一瞬前で停止した世界」
「き、君は何者……」
十葵がポツリと呟く。
しかし、女は黙って首を振って口を開く。
「今は楽しくお話をしてる余裕はない。選んで。魔人として生きるか、ここで死ぬか」
「し、死ぬ!?」
「魔人として生きるってのは……?」
「そのままの意味。この恐怖の体験をし続けて生きるってこと」
「そんな!?」
翔太が叫び声をあげる。
「酷い選択肢だと思う。けど、選ぶしかない。生きるには……選択するしかない」
少女の目はとても真剣だった。
だから、これが冗談でもなんでもなく。
現実なんだと理解出来た。
自分の命を助けてくれた女性だから、この絶望も本物なんだとわかった。
「……俺は」
だから。
「生きたい、いや、生きる!」
彼女に助けて貰ったこの命を、ここで終わらせたくなかった。
女は一瞬、とても悲しそうな、申し訳なさそうな顔をして、けど、ちょっと嬉しそうな顔をして……無表情に戻った。
「もう二人は?」
「俺も、生きる。こんなところで死んだら、パソコンのエロゲー誰が消すんだよ」
弘佑が強気に笑う。
「俺も……怖いけど。死ぬのはもっと嫌や。だから、生きる」
翔太も体に力を入れて立ち上がる。
「……オッケー。じゃあ、三人にはこれを」
そう言って少女は黒い球を十葵達に投げ渡す。
「自分の、これだっていう武器を思い描いて。それが君たちの力になってくれる。必ず生き抜こう!」
少女の決意の声とともに世界が、視界が眩い光で覆われていく。
そして十葵達は、現実へと、帰っていった。
確かな、希望を握りしめて。
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