14話 接吻
しばらくの沈黙が続く。
「……え?」
沈黙の間に、頭を整理しきれなかった十葵が思わず聞き返す。
「む、もう一回言わせるか。アンタ中々ドSですなぁ」
スプーンを噛みながら恨めしそうに睨んでくる萌佳。
「いや、その……」
再び十葵が反応に困っていると。
「私は十葵が好き。だから間接キスも気にしない。っていうか、好きだから逆にものすごい意識するけど。それは嫌とかじゃなくて……好きだから!」
バシッと投げつけるような言葉と共に黙ってアイスを食べ始める萌佳。
そんな彼女に十葵は。
「……なんつーか、告白ってこういうアイス食べながらとかグータラモードの時にあるんだな」
「悪い?どうせムードとかわかんないし」
照れたように十葵と視線を合わせず、前を向いたままアイスを食べ続ける萌佳。
「俺はムード重視派だったんだが」
「知るか!」
シャー!と猫のように唸る萌佳の肩を掴み、自分の方を向かせる十葵。
「な、なに?」
「言ったろ?俺はムード重視派なんです」
しばし、黙る二人。
そして。
「俺も……いや、俺は萌佳が好きだ。あの横断歩道で助けてくれた時から。俺に力をくれた時、俺が倒れた時、付きっきりで看病してくれた時。全部嬉しかった。だから……俺と付き合ってください」
萌佳の目を見て言い切ったあと、視線を逸らす十葵。
「……返事まで視線合わせといてよ」
「もう無理だ、限界です」
「ふふ、なにそれ。カッコいいんだか、悪いんだか」
萌佳は少しだけ笑ったあと、十葵の頬に手を当てて。
「私でよければ、よろしくお願いします」
そう言ったのだった。
「……おう、おう。ありがとう」
思わず涙ぐむ十葵。
「ちょ、泣くなよー」
慌てる萌佳。
彼女の目にも涙が浮かぶ。
お互いに額を合わせる二人。
どちらともなく、顔を見られるのが恥ずかしい結果この体勢となった。
「萌佳も泣いてんじゃん」
「は?泣いてないし」
「泣いてるって」
「泣いてません」
「じゃあ顔見せろよ」
「いいよ?」
一度離れる二人。
そして、十葵が萌佳の顔を見ようとすると、すぐさま頬に手が当てられる。
そして、ゆっくりと唇が重なる。
甘い、バニラアイスの味がした。
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