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転生屋に出会って神様をお供に異世界に行くまでの話

作者: KAIE

駄文ですがお楽しみ頂けると嬉しいです。

会社を出ると嵐。『ぶぉぉぉ』とかいう音は何の効果音だ。やってられん。


「うぇ。傘持ってないのにコレかよ……ていうか傘あっても壊れるな」


時計を見れば23時過ぎで終電は間に合う感じ。どうせ雨に濡れたところで大して高いスーツじゃないし。俺は暴風雨の中走り出した。


というより走り出そうとしたんだ。けど走る事が出来ず息が切れ胸が痛い。ここ数日繁忙期で休みがなかったせいか?


疲労が一気に押し寄せ、半ば足を引き摺るようにしか歩けない。歩いているだけなのに体が重く、電柱にふらりと寄りかかって休む。


「うあー……なんか疲れた……体調悪過ぎ……」


独身一人暮らしで残業の気兼ねがないからって、過剰な仕事の皺寄せが俺んとこに毎日のように来てたからなぁ。


明日は全休だけど何もする気にもなんないし、今はただひたすら眠りたい。


雨で視界がぼやける中、寄りかかった電柱の横の路地が目に入る。


「こんなところ路地あったっけな?」


ここを抜ければ駅への近道になるかな?とか思った俺はその路地へと足を進めてみた。


路地に入れば吹き荒んでいた風と雨が突然止んだ。うぉ、止むならもうちょい早く止んでくれたら濡れずに済んだのに。独り言ちながら人気のない路地を進むと、悪趣味な看板が目に入る。紫のベースにピンクのネオンで装飾された場末のスナックみたいな看板だ。


『転生屋』看板の文字を読むとそう買いてある。飲み屋かな?ビールでも一気に煽れば体調の悪さと疲れが取れるかなぁ。でもずぶ濡れのこの姿じゃ店に入っても寛げないし、店の椅子が濡れるな。大人しく帰るか。


そのまま通り過ぎようとしたら目の前でドアが開いた。


「いらっしゃい~。どうぞ~、早く入って~」


俺が店の前の居ることを知ってたみたいに、両耳にルーズリーフのように丸い輪のピアスを大量に付けた緑の髪のチャラい感じの兄ちゃんが中から声をかけてきた。


「あ、いや、俺ずぶ濡れなんで」


そう返事をすると、ピアスの兄ちゃんはニコっと笑うと俺の手を引っ張り店の中へと引っぱりこむ。


「ちょっ?!」

「い~から い~から~。」


中に入るとそこは落ち着いた雰囲気のまるで教会のような空間が広がっていた。窓にはステンドグラスが嵌め込まれ長椅子が5列ほど並び、前には教壇のような机が置かれている。


その机の後ろに置かれて居るのがキリスト像やマリア像だったら間違いなく教会と思ってしまうような部屋だ。


ちなみに飾られているのは得体の知れないまるでドラゴンのようなちょっとカッコイイ魔物っぽい像。うーむ、ここはどうやら飲み屋ではなさそうだ。


「えっと?ここは?」


「あれ~?君、看板見てたよね~?」


「転生屋ってやつ?」


「それそれ~。じゃとりあえず、そこ座って~」


教壇のような机の前に置かれた丸椅子を指し示され、そこへ座らされた。


「それじゃぁ始めるよ~。えーっと、みちびかれしものよ、まだしぬときではありません。いきとし いけるものは みな かみのこ わがきょうかいに どんなごようかな~?」


そういうとルーズリーフピアスの兄ちゃんはファミレスのメニューのような物を差し出した。


「?!」


思わずド○クエ?! と思ったのを声に出さなかった俺は頑張ったと思う。


メニューを見る。


『おいのり を する

どくの ちりょう

のろい を とく

いきかえらせる』


「どう見てもドラク○だろっ!」


おっと今度は言葉に出てしまった。


「分かりやすいようにメニューにしてみたんだよ~。どうかな~?」


ニコニコとルーズリーフピアスの兄ちゃんは言ってくるけど、どうしていいのか分かんないんだけど。もしかしてそういうプレイの店なのかな?ちょっと面白そうだし選んでみる。


「じゃぁ…のろいをとくで?」


「は~い。のろいね~。ちょっと手を出してね~」


ルーズリーフピアスの兄ちゃんは俺の手を握り目を閉じた。5秒ぐらい無言で手を握られ何とも言えない居心地の悪い時間の後、兄ちゃんは再び目を開けた。


「いやぁ~ぼくここまでの呪い、初めて見たよ~。君、すごいねぇ~?」


「え? 俺呪われてんの?」


「うん。すごいよ~。歴代一位の呪いの量」


呪われてるとか言われて喜ぶ奴はいない気がする。信じちゃ居ないが、どんな事を言ってくれるのか、少し面白くなって聞いて見た。


「呪われたら何があるんだ?」


「ん~。呪いも色々種類があるんだよねぇ~。呪いの原因は妬みとか逆恨みとか執着から来る事が多いね~。君は~呪いのせいで~天涯孤独になって~歩けば車が突っ込んできて~、頭上から鉄パイプ降ってきたり~? 植木鉢が降ってきたり~? 寄りかかった柵が壊れて落ちたり~? 駅のホームに落とされたり~? 仕事押し付けられたり~? っていう感じ~?」


どっかで俺の人生見てきたのかな? 全部思い当たるぞ。え? 全部呪いのせいって事?


「君の呪いのすごいところは~、男からも女からもってところかなぁ~? 数百人単位での呪いって僕は初めて見たよ~?」


「え? どういう事?」


思わずまともに聞き返してしまった。


「女の子からは自分の物にならない男なんて死んじゃえ~? とか私だけのモノにして監禁しちゃいたい~とか? 執着されて呪われちゃった~? って感じのが多いね~」


ルーズリーフピアスの兄ちゃんの喋り方が微妙に気になるけど、とりあえずそれは置いておこう。


「女の子からってことは男からも何かあんの?」


「好きな女の子が全部キミに惚れていくとか~? 男でもいいから俺の物にしたい~とか~? ふふ、君モテモテだなぁ~。嫌われて付いた呪いじゃなくて執着心から来てる呪いが多いから~。良かったね~?」


全然良くないし嬉しくねぇ。なんだその呪い。


「とけるの? その呪い?」


思わず真剣に聞いてしまった。あ、こんな事を間に受けて俺ハズカシー!

とか思ってたら、返事が返ってきた。


「そうだね~。一呪い一万円で~。563万円だよ~。」


「高っ!! ってか俺563人に呪われてんの?」


「そうだねえ~。軽いのから重いのまであるけど563人」


ありえねぇ。こんなん無視して帰ろう。過重労働に耐えてコツコツ貯めたお金をこんな事で使えない。


「いや、そんなん無理だし。帰ります」


そう言ってドアに手をかけるとびくとも動かない。


「ちょ、開かないんだけど?」


まさかぼったくりバー系統で金払わないと返してくれない系か?! これはマズイ!


振り返るとルーズリーフピアスの兄ちゃんがこっちに歩いてきた。


「もう開かないって事は君はもう完全に意識がないって事だよ~。僕が開けても多分出れないよ~?」


ルーズリーフピアスの兄ちゃんがドアに手をかけると、まるで力を入れているように見えないのにするりとドアが開いた。


「帰れるなら帰ってもいいよ~?」


そう言われて足を踏み出そうとするのに足がドアの直前で止まる。


「え? なんで?」


手を外に出そうと伸ばしてもそれ以上伸ばせない。体が固まる。なんぞこれ?


「なんで??? え? どうなってんの?」


「君はねぇ~、ここくる時に路地に入ったでしょ~? あそこで時間が止まってるんだよ~。それで~、ここから出たら~その瞬間にぶっ倒れてそのまま死んじゃう感じ~?」


「え??? 俺死ぬの?」


「も~、ちゃんとメニュー見た~?」


慌ててもう一度メニューを見る。


『おいのり を する

どくの ちりょう

のろい を とく

いきかえらせる』


「いきかえらせる? って……マジで言ってんの?」


「まぁ落ち着いて座りなよ~。とりあえず毒の治療はサービスでしてあげるからさ~」


「え? 毒?」


「君、なんか同じ会社で働いてる女の子に好かれてるでしょ~?」


確かに美人だけど妙に馴れ馴れしく話しかけてきて、やたらと飲み物やらお菓子やらを差し入れてくれる少し苦手なタイプのあの娘の事かな?


「君に毎日なんか食べ物とか飲み物くれるでしょ~? あれに薄い毒が入ってるんだよ~。毎日摂り続けると内臓が弱って~って感じのやつ~」


「え? 最近妙に体調が悪かったのは過労じゃ?」


「実は毒~? みたいな~?」


どこぞの頭の悪い女子高生のような喋り方はもう気にならない。俺は既にいっぱいいっぱいかもしれないぞ?


「とりあえず~これ飲むといいよ~。人呼んでエリク○~」


「そこはドラ○エなら毒消し草か万能薬あたりだろ! なんで急にFFなんだ!」


「そこに突っ込むんだ~。君って順応力高いよねぇ~。あぁ~だからそんなに呪い引っ付けててもまだ生きてたんだねぇ~。呪いにまで順応するとか~才能あるねぇ~。もしかしたら毒がなきゃもうちょい生きれたんじゃない~?まぁこれはサービスだから飲んじゃいなよ~」


とりあえず受け取った瓶の蓋を開けて喉に流し込んだ。


「え~?そこで疑いなく飲んじゃうんだ~? 毒飲まされてたのに警戒心なさ過ぎじゃないかなぁ~? それも毒だよ~?」


「え?マジで?美味しかったのに」


意外に爽やかな喉ごしでもう一度飲みたいと思ったのに毒なのかと瓶を見つめる。


「いや、嘘だけどね~?」


「そうなのか? 毒でもお代わりしたいぐらい美味しかった」


「え~? それでいいの~? 僕なんだか君が心配になってきたよ~」


なんだか体がポカポカしてきた。久しぶりに身体が軽い気がするし疲れも消えてきた気がする。


「え? これマジでこれエ○クサーじゃね?」


「だからそう言ってるのに~。非売品だから普通は買えないんだからね~」


「え?? 俺今手持ちのお金そんなないよ?」


「今回は呪いの数、過去最高記録記念の賞品とでも思っておけばいいよ~」


「マジで? サンキュ」


「そこも順応しちゃうんだねぇ~」


「なぁ、これって呪い解いてもらったら帰れんの?」


「帰れるけど~、部屋から出て10分ぐらいで多分君は死ぬよね~。身体の毒は消えてないし~?」


「えー? エリ○サー飲んだのに?」


「ここに居る君はタマシイ的な部分だから~。肉体はもう限界だよ~? よく動いてたよね~? びっくりだよ~?」


「じゃぁ生き返らせるってのやって貰えばいいのか?」


「そうそう~。それだよ~。分かってるじゃない~」


「それ、いくらかかんの?」


「イージー、ノーマル、ハード、どれがいい~?」


「え? 難易度あんの?」


「イージーはねぇ~生き返るけど~違う世界に行っちゃうんだよね~。ここみたいな科学の発展した世界じゃないし~身体もその世界用になるから~今と同じって訳にはいかないんだよ~。記憶もちょっと消えちゃう部分が出て来ちゃうかも~?」


「んじゃノーマルは?」


「今の世界に戻るけど~、同じ身体に戻るからねえ~。呪いと毒ガードをオプションでつけて~10年は寝たきり生活かなぁ~?一命は取り止めたけど~みたいな~?」


「うげ、なんか聞きたくないけどハードは?」


「ノーマルと同じように今の世界に戻るけど~、オプションなしでそのまま戻すって事だから~多分昏睡状態で~運が良けりゃ死ぬまでに一回ぐらい目が覚める的な~?」


「それって選択肢なくね?」


「え~? そう~?」


「むしろその選択肢でハード選べる人間が居るのか知りたいレベルなんだけども……。まぁぃや、10年寝たきりも辛いし、イージーで」


「いいの~?身体もちょっと変わるし~記憶も多少飛んじゃうけど~?」


「寝たきりとかキツイし……ていうか、俺そんなにお金ないんだけど生き返らすとかできんの?」


「イージーコースは割安なんだよ~。君は元の世界に戻す方が実は大変なんだよねぇ~」


「呪いで563万だろ?俺の全財産、定期貯金とか保険とか全部合わせて1000万ぐらいだけど足りる?」


「イージーコースはねぇ200万だよ~。」


「え?呪いより安いの?」


「ちなみにノーマルは1500万で~、ハードは2000万ね~。」


「え? なんか桁が違くね? ていうか厳しい条件のハードのが高いのはなんで?」


「元の世界に戻す方が大変だって言ったでしょ~? だって君はほぼ死んでるんだもん~。より現実に近い状態で戻すのが一番大変なんだよ~?」


「えぇぇ? でも寝たきりで一生終えそうなのに2000万?」


「ていうか君みたいにボロボロの身体でここ来る人のが少ないんだよね~」


「普段はどんなヤツ来るの?」


「大概が事故起きる寸前とかね~、自殺志望の人とかかなぁ~? 事故は起きる前だから身体が壊れる前に対処出来るし~。自殺は~呪い取っちゃえば割とそのまま元気に生きれたり~? そういう場合は~イージーとハードが逆っていうか~?」


「身体がボロボロになってないからってこと?」


「そういう事~。でも人によっては異世界に順応し難い人も居るんだよ~。そういうのもあるから~、人によってコースは違うんだ~。まぁ深く考えちゃダメだよ~」


「それもそうか」


今更こんな訳のわかんない状況を理解しようとしても無駄だとスッパリ考えるのをやめた。


「そこで納得しちゃうんだ~?」


「ていうか俺現金とか持ち歩いてないんだけど?」


「カードも使えるよ~?」


「マジで? すげぇな転生屋。これでいい?」


俺はクレジットカードを出してルーズリーフピアスの兄ちゃんに渡した。


「え~っと~763万、一括引き落とし出来る~?」


「あ、できないわ。多分100万ぐらいまでしか。ゴールドとかブラックとか持ってねぇし」


「それじゃ、分割で引き落とししとくよ~。分割手数料かかるけどいい~?」


「ていうか、俺この世界に戻れないんだろ? 身内も居ないしこっちのお金残っててもしょうがないんじゃ?」


「まあ~。そうだねぇ~」


「あー。エリクサー貰ったし、残りも全部取っといてくれていいよ。貯金は全部このカードの口座に入ってるし」


「え~?君って欲とかないわけ~?」


「え?あるよ?」


「コツコツ貯めたお金、ポンって無くなっちゃっていいの~?」


「だって、使えないんだろ?」


「おぉ~。何という順応力~。普通は惜しくなっちゃうと思うんだけど~。それじゃぁ、余ったお金の分は~新しい世界で生きやすいような~サービス付けておくね~。」


「そうなのか?サンキュ、助かる。てか全くお金持ってなかったらどうなるんだ?」


「ん~?その人の全財産で決まる感じだよ~」


「え?じゃぁ俺の貯金も最初から分かってたのか?」


「そうだねぇ~そうなのかも~?でも呪いは別料金でこんなに呪い付いてる人普通は居ないから君は特殊だよね~。普通呪いあっても5個も付いてりゃ多いぐらいなんだけど~」


「マジで? 今まで最高幾つ付いてたんだ?」


「え~? それ聞いちゃうの~?聞かない方がよくないかなぁ~?」


「そう言われると余計気になるんだけど」


「14だよ~」


「え?」


「じゅうよんだよ~」


「え? 俺の……」


「563個だねぇ~」


「おかしくね?」


「君、呪われやすいっていうか~? 人に執着されやすいっていうか~? まぁそういう体質なんだろうねぇ~。あ~、転生する時は呪い無効付けてあげるよ~。寄付してくれたしね~」


「お、それは助かる。エリ○サーもくれたし、あんたいい人だな。違う世界行ってもまた会えるのか?」


「あ~そうやって人垂らし込んで~執着されちゃう系か~」


「え?何?」


「いやぁ~。なかなか今までに居ないタイプだなぁ~って思ってね~」


「やっぱ呪い563個も付いてるって事はやっぱダメな感じか?」


「しかも鈍いのか~。ちょっとオプション多めに付けないと危なっかしいよね~君は~」


「俺運動神経はそんな悪い方でもなかったけどなぁ? 自分じゃ気付かなかったけど、言われてみれば働いてばっかで鈍ったか……」


「あ~……本人無自覚とかダメなやつだね~。戻ってこられても困るしオプションいっぱい付けとこ~っと」


「オプションって呪い無効ってやつ?」


「君に呪い無効は必須だよね~。まぁ後は適当に付けとくから~」


「なぁ、メニューのお祈りするってやつ、これはどうやればいいんだ?」


「ん~? セーブでもしたいの~?」


「いや、そうじゃなくて。俺は死ぬところを助けて貰ったって事だろ? それならちゃんとお礼言っときたい。あんたが神様なのか?」


「お金取られるのにお礼ちゃんと言っちゃうとか~素直過ぎない~? だから呪いひっついちゃうんだねぇ~?僕は神様の下請けってやつだよ~。部下みたいなやつ~?」


「そうなのか? あんた名前なんて言うんだ?俺は記憶無くなるかもなんだろけど、助けてくれた人の名前ぐらい知っときたいし教えてよ?」


「僕の名前聞いた人、君が初めてだよ~? でも僕名前ないんだよね~。君がなんか適当に付けてくれる~?」


「え?? 適当じゃダメだろ? しかも俺俺に名前付けられたら呪われやすくなったりしないか? 大丈夫か?」


「多分大丈夫だよ~」


名前かぁ。難しい。人の名前なんか考えた事もなかった。


「うーん……」


「直感でみたまんんまの感じでいいよ~?」


直感で見たまんま?ルーズリーフだな。でも文房具じゃアレだしなぁ……。


「リーフ、ってのどう?英語だと葉だけど。髪も緑だし」


「リーフかぁ~。あ、僕の名前リーフって言うんだ~」


「お。おう?よろしくな?リーフ」


「名前をくれてありがとうね~。お祈りは~そこの祭壇に向かって適当に祈ればいいと思うよ~」


「そうなのか。んじゃちょっとお祈りさせてもらおう」


俺は心の中で『助けてもらいありがとうございました。違う世界の神様なのか、この世界の神様なのかよく分かんないけど、今までこの世界でお世話になりました。違う世界でまたよろしくお願いいたします』


そうお祈りを済ませた。


「なぁリーフ君、そこに飾ってある像が神様の姿なのか?」


「サイズは違うけど~君がこれから行く世界の神殿に祀られてる神様像だねぇ~」


「そうなのか。これカッコいいよな。ドラゴンみたいで」


「この像あるとこで祈りを捧げると神様の力になるらしいよ~?

とりあえず心の準備出来たら教えてよ~。転生先に連れて行くからさ~」


家に帰ってしたかった事はただひたすら眠りたかっただけだった。けどエリク○ーを飲んでからは今までずっと感じてた体のダルさや重さも無くなって、気力まで充実している感じ。今なら何でもできそうな気がする。


「そういや俺はこの世界から違う世界に行くんだろ?俺の体ってもしかして道端で死体になってんの?」


「そうなるねぇ~。体は新しい世界用になって魂だけ行く感じ~」


「へぇ。でも俺の死体が残ると同僚の子が殺人罪とかになるんじゃね?」


「毒殺ってバレたらそうなるんじゃないかなぁ~?」


「毒殺ってバレないように出来る?」


「え~? 出来るっちゃぁできるけど~? でも自分を殺した相手も許しちゃうの~?」


「まぁ恨んでもしょうがないし、後味悪いの嫌だからな」


「分かったよ~。心の準備が出来たなら、こっちへどうぞ~。この扉をくぐればいいから~」


「お世話になりました」


俺はリーフ君へ頭を下げた。


「んふふ~。それじゃ頑張ってね~」


そして俺は真っ白に見える扉の向こうへと一歩を踏み出した。


目を開けるとそこは?異世界でしたー。ドンドンパフパフヒューヒューパチパチ。とか心の中で言いながら真っ白な世界を進んで行く。


「この真っ白な世界が異世界ってやつ? それだと俺ちょっと泣いちゃうぜ?誰か居ませんかー?」


見渡す限り真っ白な世界。ちょっと寂しくなってきた。もしかして結構遠いのかな? とか思いながらテクテクと歩いていると、自分が真っ直ぐ進んでいるのか、ちゃんと地面を歩いているのかも分からなくなってきた。


思わず後ろを振り返ってみるが、そこもただ真っ白な世界。

どっちから来たのかも、どっちへ進めばいいのかも分からない。


「もしかして、俺って迷子?」


『迷子ではないのじゃ』


どっからか声が聞こえる。でも姿が見えない。あれー?


「どこですか?」


『ここじゃよー』


下から聞こえる? とか思って下を見ると拳サイズのドラゴンのフィギュアのような物がそこにはあった。


「マジで? ロボット?」


そのフィギュアがチマチマ動いてるのを見て思わず言葉が漏れた。


なでなでしてみる。なんか暖かいし生きてるみたいだ。


『違うのじゃ。ワシ、神じゃ』


「え?神様でしたか。死ぬところを助けて頂いてありがとうございました。飾ってあった像とサイズが違うって聞いてたのにすぐ気付けなくってすみません」


『……キミ、ホントに順応ハヤイネ。ビックリじゃよ』


「あ、俺迷子っぽくて困ってたんですよ」


『キミさっきお祈りしとったじゃろ?神相手にあれこれお願いしてくるモンは多いんじゃが、素直に礼だけ言うて来たのが珍しゅうてのぅ。顔見に来たんじゃ』


掌サイズの神様はパタパタと羽を羽ばたかせ、俺の腕にちょこんと乗った。


「神様、めっちゃ可愛いですね」


思わず喉をなでなですると、神様は猫のようにスリっと首を指に擦り付けてきた。


「俺ペットって飼ったことないけど、みんなこういう癒しを求めてんのかぁ。神様俺のペットになりませんか?」


『ふぉっ?!つい気持ちよう撫でられとった!アブナイ、うっかり流されるとこじゃった』


「流されてくれていいですよ。俺ちゃんと一生大事にしますから」


『ナンジャト?! 一生大事にしてくれると?! ワシそんな事言われたんハジメテじゃぁ』


「神様~しっかりしてくださいよ~。流されかかってますよ~」


『ハッ! ワシとした事が! ペットも良いかと思ってしまっておった! コヤツは危険じゃの!』


誰も居なかった筈なのにリーフ君が目の前に居る。


「あれ? いつの間に?」


「神様がねぇ~君の事を直接見てみたいとか言って~付いて行っちゃったからねぇ~。神様をお迎えに来たんだよ~」


「あぁ、やっぱり神様はペットにしちゃお仕事困りますよね。残念です」


もう一度神様の喉をコチョコチョするとまた神様は指にスリっとしてくれた。


「やばい、可愛い……」


こっそりポケットに入れて連れて行きたい。とか思ってたら、神様がゴソゴソと俺のスーツの胸ポケットに潜りこもうとしている。


「入りますか?」


ポケットの入り口を広げると神様がすっぽりとそこに収まりちょこんと顔を出して居る。


「これは可愛い過ぎるんじゃないでしょうか? 神様、俺をメロメロにしてどうするつもりですか? やっぱり俺のペットになりませんか? もうそこは神様の定位置にしか思えません。俺と二人で新しい世界で一緒に暮らしましょう」


「神様~、人間一人に懐いちゃ駄目ですよ~ぅ。仕事して貰わないと困ります~」


そう言うとリーフ君は神様を俺の胸ポケットから掴んで抜いた。


「あ、()()神様が!」


『ワシ、キミの物じゃったのか? これリーフ離さんか!ワシはあのポケットに戻らねば』


「神様~、駄目ですってば~。何簡単に籠絡されちゃってるんですかぁ~。普段人と接触する事ないからってチョロすぎますよ~。しっかり~」


リーフ君が軽く神様を揺すった。


『ハッ。うっかりまたペットになりかかっておった。アブナイのじゃ』


「でも面白い人ですよねぇ~。そういや僕さっき名前付けて貰ったんですよ~」


『ぬぅ。お前だけズルいではないか! ワシも名前が欲しいのじゃ』


「神様もお名前無いんですか?」


『無いことも無いが、新しい名前があっても良いではないか』


「なるほど。あだ名的な物が欲しいって事なんですかね?」


『うむ。そうじゃ』


神様だしなぁ。見た目ドラゴンだけど何の神様なんだろう?神様と言えば豊穣の神とか?豊かとか実りとかかな?」


「それじゃ実りって意味のハーベストから取ってハストとかどうですか?」


『ワシ、ハストっていう神なんじゃがの。せっかくじゃしキミに加護を付けてやろう。なに、遠慮は要らんぞ。名前付けてもろうたお礼じゃし』


「あ、名前気に入って貰えたんですね。良かったです。加護は嬉しいんですが、加護よりハスト様にお会い出来た方が嬉しかったですよ。リーフ君がオプションで呪い無効つけてくれたので、加護は他の困った人に付けてあげてください」


『わ、ワシ…』


なぜかポケットに戻って来ようとする神様をリーフ君が捕まえた。ハスト様がリーフ君の手の中でじたじたと暴れながら俺の方へすごく小さな手を伸ばしている。あぁ、めっちゃ可愛い。


「ほら、神様~もう帰りますよ~」


「神様はお仕事ありますもんね……。遊んでる暇なんてないですよね。分かってます……。神様、俺ちゃんと教会でお祈りしますから」


『リーフ、離さんか! こいつにはワシが付いててやらんと!』


「これが呪い563個付いた理由ですか~。僕もビックリですよ~。仕方ないですね~、この人の人生が終わるまでだけ休暇申請しときます~。その代わり帰ってきたらビシバシ仕事してくださいよ~」


『うむ、分かったぞ。さぁ行こう』


そうして俺は神様を胸ポケットに入れて新しい世界へと踏み出した。




ちなみに俺に『邪神の加護』が付いている事に気付くのはもう少し先の話だ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] めちゃめちゃ呪われてる主人公( ; ゜Д゜) 可愛いです~~ 神様は邪神だったんですね~~ 細かいところまで面白かったです~~ この人転生先でどーなるんだろ、とワクワクしました。 天然無双…
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