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月光草と言う月明かりの明るい夜にしか咲かない薬草を探しに、人里離れた山奥を大きな皮のリュックを背負い歩いていた男ラウルは、獣道の奥にぼんやりと光る淡い光に足を止め、左手に持つランタンを前に掲げ目を凝らす。
足音を忍ばせゆっくりと腰ほどまである草を掻き分ければうつ伏せで倒れた子供とその子供の周りを飛ぶ蛍の様な光を放つ精霊達。
淡い光の正体は精霊だったようだ。
ラウルはランタンを足下に置くと子供の体を上向きに転がす。
ランタンと精霊の光で露になった顔にラウルは切れ長の目を僅かに見開いた。
「こりゃあ驚いた、白狼族の子供か…奴らが住む国はここから遠かろうに…」
一番近い人里でも三里は先にある。ましてやまだ幼い子供一人の足ではとてもじゃないが生きてたどり着く事は出来ないだろう。
奴隷狩りにあった子が逃げ出して来たかと手首や足首を見るも枷のついていた跡はない。
一通り子供の体に異常がないか調べたラウルは、皮のリュックから大きな毛布を出し、すっかり冷えきってしまっている子供を毛布にくるんで抱き上げるとランタンを持ち、元来た道を歩き出した。