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第28話 本人の心掛けヒトツなんですが

「月形先輩、内線2番でーす」

「…はい、お待たせしまし…」

『つっ、月形君?!い、急いで、急いで来てくれないかな?』

取引先の狸親父だ。

一体何を焦っているのか。

ここ数日、ウチとは打ち合わせの予定も無かったはずだが…。


『てっ、転生!異世界、しちゃったよ!若いコが!』

「???」


 電話では埒が明かないため、ひとまず先方へ向かう。

折り悪く、通りには転生トラックだらけだ。

これは注意しなければ。

油断して異世界にトばされては敵わない。


「…どーも、お世話になっておりますー」

「あっ月形君!良かったよ~」


 狸親父の話を纏めると、どうやら狸親父の目の前で若い社員がトラックに轢かれた、と思いきやその姿はどこにも居なくなっていたとの事だった。


「どう思う?」

「異世界…でしょうね」

「やっぱりい?ワタシは月形君と一緒だった事しかないから、こんなの始めてで」

「最近は野生の転生トラックが多いんですよ」

「困ったなあ。どうしたらいいだろう?」

「帰還を待つより、ないですねぇ」

「そーなっちゃうかあ」

転生にしろ転移にしろ、行った異世界にこちらから干渉できるケースは少ない。


「アンチパターンなら、希に追ったり通信できたりもありますが、難しいと思われます」

「戻ってくるなら、まあ良いんだけどさあ」

「ちょっと状況を確認させてもらっても、良いですか?」

「状況って?」

実は、異世界に行く人間には、ほぼ共通のパターンがあるのだ。


「いいですか?そもそも意図せず異世界に行く人間は『この世界に居場所のない人間』なんです」

「ふむ?」


 学生ならイジメの対象者、または空気なキャラ。

社会人の場合も同様で、周囲からは蔑ろにされて自己顕示欲の満たされていない不遇な者。

いわゆる陰キャだ。

陰キャがこの世界では満たされない欲望を望むからこそ、異世界との遭遇が起こるのだ。


「…以上を踏まえて、御社内で彼の様子は如何でしたか?」

「…う~ん、正直言って、目立たない性格だったから…」

「やはりですか」

「友達も…居なさそうだったかな…」

「ご両親とは?」

「えっ、いや、どうだったかな…余り良くない…だったかも」

両親との不仲、親しい友人や恋人の不在も、重要なファクターだ。


「恋人などは?」

「居たらびっくりだよ!女子社員からも…その、ね?」

「…まあ、まず間違いなく異世界です。その内戻ります。が…」

「…が?」

「状況が変わらなければ、またいつ異世界に行くか、わかりませんよ」

「それは、困るなあ」

異世界に魅せられないようにするには、この世界で充足を得るより他に術はない。


「…例えば、何かプロジェクトを任せてみるとか」

「う~ん、そういうのは、実績ありきだし」

「社内で、交流を持つような働きかけは?」

「ウチ、むしろ多い方だよ~。…彼は余り参加してないみたいだったけど」

「難しいですねぇ。まあそもそも、本人の心掛けヒトツなんですが」

「そうだよねえ。お昼すら、独りで食べてたしなあ」


 正直に言って、陰気な日陰者による異世界への憧れを完全に止めるのは難しいだろう。

「さしあたっては、上司のお立場から、お声掛け頂くとか」

「それも、マネジメントの内かあ」

「…お察しします」

「…ま、考えてみるよ~」


 実際、人から無下にされ努力する事もなく十全な人間関係すら作れない未成熟な人間をどう扱えば良いだろう。


 それこそ、異世界にでも逃げるしか、ないのではないだろうか。

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