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0.昨日は飲みすぎた

よろしくお願いします。

どうやら酔い潰れてそのまま店で寝てしまったみたいだ。

カウンターにはテキーラの空き瓶が転がり、洗っていないショットグラスがそのまま放置されている。


何だかんだでこの店も3周年を迎えることができ、昨日はそのお祝いで常連さん達がお祝いに来てくれた。

こちらも嬉しくなって勧められるがままにお酒を飲んでいたら久しぶりに泥酔してしまった。


レジを確認すると最後まで残っていた宮さんの会計伝票がしわくちゃになって突っ込まれていた。

酔い潰れても貰うものはしっかりと貰っておく、やっとこ自分にも水商売人としての自覚が出てきたということだろう。


それにしても頭が痛い、これは結構酷い二日酔いだ。

とにかく水を飲まなければ。


蛇口を捻りコップに水を注ぎ一息に飲み干す、続けてもう一杯、さらにもう一杯。

ついでに顔も洗うとだいぶすっきりした。酒を飲んだ次の日は水が旨い。

それにしても普段よりもすっきりとしていて何だが身体にすっと染み込むような感じがする。


「この前浄水器を買い替えたからか?」

なんて独り言を呟くとどこからともなく声がした。


『スキルを選択してください』


ん?スキル?なんだそりゃ。

酒の飲みすぎで幻聴でも聞こえるようになったのか?


「誰かいるのか...?」

反応は無い。やはり自分の気のせいか。

そう思いテキーラのボトルを片付けようとすると再度声がした。


『スキルを選択してください』

!!やはり気のせい何かではない。確実に誰かが自分に話しかけている。

しかも頭の中に直接響く。スキルだかなんだか知らないが二日酔いの頭に声が鳴り響くのは相当辛い。


「よく分からないが、何かを選ばなきゃいけないのなら今はとにかく頭すっきりとさせたい!もう最高に冴えわたるぐらいすっきりと!」


『スキル:大賢者(極)を獲得しました』


再度頭に声が響いた。大賢者だか何だか知らないが相変わらず酒が残っている。

うぅ...気持ち悪い...


『スキルを選択してください』

また声が響く、勘弁してくれ...


「とりあえずその機械的な声をやめてくれ!こっちは二日酔いなんだ。その無機質な声が頭に響いて仕方ない。もっと優しい、温かみのある声にならないか...?」


『スキル:順風耳(万物の声)を獲得しました』


じゅんぷう?なんだそれ?

(順風耳とは、万物を見通せる目を持つ鬼『千里眼』と一対の鬼のことです。このスキルによって世の中のあらゆる生物の声を聴くことができるようになります。)


うぉっ!先程の機械的な音声とは別に新たに他の声が頭に響いた。

なんなんだ一体...!俺はどうにかしちまったのか?


高校も碌に通わず担任のお情けで卒業した後は日雇いなどでその場しのぎの生活を過ごし、こんなんじゃいかんと一念発起して立ち上げたこのバーだが、日々の疲れとアルコールが俺の身体を蝕んでいたに違いない。ようやく3年目を迎え、これで社会の一員になれたかと思ったが人生そう上手くはいかないってことか...。今日は店を閉めて病院に行くべきだろうか...。


(その必要はありません。私は先程、主が獲得されたスキル:大賢者です。私の知る範囲内ですが、主の疑問や質問に対してお答えすることができます。)


不思議と温かみのある、まるで全てを知り全てを知り尽くしたかのような声に全てを信じてもいいと思うほど安心感があった。


「ということは、君もさっきの順風耳とやらも俺のスキルになったってことか?そもそもスキルってなんだ?というかきっかけはなんだ?」


(はい。先程、スキルの泉の水を飲んだことで主にスキルが備わりました。スキルとは体力、技術、魔法力などの生物が持って生まれてくる生来の能力の他に特別な条件をクリアすることで獲得することの出来る特殊能力のことを指します。)


「やっぱり俺は酔ってるのかなぁ。君の言うことは何だか信じたいような気もするんだけど、魔法とか言われてもね、俺自身も使ったことないし周りでも使ってる人見たことないし。生来のものってことは俺でも≪邪王炎殺なんたら~≫って唱えたら魔界の炎とか出せるわけ?」

傍から見たら一人で会話しているヤバい奴だななんて思いながら、へらへらと笑いながら質問した。


(はい。お望みとあらば使用することが出来ます。魔界の炎の召喚となると火系の上位となりますのでスキルでの補正が必要です。主の獲得可能スキル枠はまだ一つ空いておりますので、選択可能です。)


確かに先程から大賢者と話している間にもスキルを選択してくださいという声が再度聞こえてきた。大賢者の言うことを信じないわけではないが、やはり俺は酔っ払っているのだろう、というよりまだ夢の中なのであろう。


そう考えるとだいぶ気が楽になった。もうこうなったら好きなように言ってやろう。だって夢なのだから。


「そしたらさ、なんか火を出せるだけって勿体無いよね。どうせなら全ての魔法を好きなだけぶっ放せるくらいのスキルが欲しいなーなんて思うけど。」


(どこまでの範囲を差しているのでしょうか?全ての魔法を扱えるとなると神話級のスキルが必要となりますが)


「んー、任せた!君に全部任せるよ!大賢者なんだろ?適当に見繕っておいてくれ。俺は寝る!」


夢の中で寝るというのも不思議な体験だが、今日は何だが気持ちよく寝れそうな気がした。大賢者とやらがなにか言っているが酒でいっぱいの頭には何も入ってこなかった。今日の営業時間まで時間はあるだろう、それまで再度眠ることにした。


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