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デス・ゲーム4




 目の前には月明かりに薄く照らされた墓地が広がっているだけだ。

 白木はどこにもいない。


 一筋の冷や汗が頬を伝った。

 一体どういうことだ。どこに消えたというのか。



 俺は遮蔽物の陰から飛び出した。

 やはりどこにもいない。


 そのまま足を白木が立っていた墓石の前まで運んだ。

 なんの変哲もないただの墓石だった。

 念のためもう一度辺りを見渡したが、やはり白木の姿は見当たらなかった。

 

 ポケットから懐中電灯を取り出して光を当ててよく調べてみる。

 すると、わずかに墓石が動かされた跡を見つけた。

 一番上の接続部が、確かにズレている。




「……そういえば、三島は隠し部屋に続く扉を見つけたって……言ってたな」

 もしかすると、この墓石をどかせば地下に続く入り口が現れるのではないだろうか。

 まさか自分が墓荒らしの真似事をするなんて思いもしなかった。


 木が葉を擦り合わせ、不快な音を立てている。

 誰かの視線を感じる。全身が冷や汗でびっしょりと濡れている。

 あのとき、咄嗟に嘘なんてつかなければこんなことにはならなかったのに、と後悔の念が押し寄せる。



 もう一度辺りを見渡してもやはり誰もいない。

 気のせいだ。恐怖で歯がカチカチと音を立てた。

 一刻も早く家に帰りたい。

 そんな思いが俺の行動を後押ししてくれた。

 俺は墓石をズラした。墓石は異様に軽く、張りぼてのようだった。



「軽い……、なんだよこれ……。墓ってこんなに軽いのか?」

 穴が見えた。

 深い穴だ。


 暗くて底が見えずどこまで続いているのか分からない。

 動かした墓石の底面には太いロープがつけられていて、それが暗闇の奥まで続いていた。

 このロープを降りれば、自動的に墓石が元通りに戻る仕組みらしい。



「そういえば、三島……。入り口を見つけたから今から入るって言ってたよな……。あいつここを降りてったのか……? たぶん白木も……だよな」



 背中に悪寒が走る。

 ここの穴に入れば、生きて戻ってこれないような気がした。


 たじろいでしまった。

 明日警察にこの墓穴のことを話して、捜索してもらえばいい。

 俺が入る必要なんてないんだ。もう帰ろう。

 三島は見つけられなかったが、おそらくこの中だろう。

 俺は完全に腰がひけてしまっていた。



 墓石を元通りに直し、帰ろうと体をさっききた方へ向けた瞬間、ライトの灯りが見えた。

 この寺の見回りだろうか。それとも警察だろうか。



 まずいと思った。

 こんなところを見られたらどんな疑いがかかるか分からない。


 どうするか考えている間にもライトはどんどんこちらに近づいてくる。

「くそっ……。なんで俺がこんなことしなきゃなんねーんだ」



 悪態をついた俺がとった行動は、墓穴に入ることだった。



 一時凌ぎでいい。

 巡回してる奴がどこかへ行ったら、また出ればいいだけの話だ。

 そうと決まれば俺は墓石を動かし、ロープに垂れ下がりながら体を墓穴に入れた。

 俺の体重の重みで墓石は元通りの姿になった。

 真っ暗な世界で俺はロープにぶら下がっている。

 下にいけばどんなことが待っているのか分かったものじゃない。


 三島はゲームが行われていると言っていたが真実は分からない。

 それに、地下で秘密裏に行われていることでまず最初に頭に浮かぶことは超高レートのギャンブルだ。


 しかし、こんな墓穴が入り口の会場に金を持ってる奴が出入りするのかは疑問である。

 そろそろ腕に乳酸が溜まってきた。


 巡回している奴はもう帰っただろうか。

 俺は外の様子を見るためにそっと、可動部である墓石の底面に触れた。



「……あっ、やばい。動かない」



 自分の体重のせいで墓石が動かなくなっていた。

 焦っていたとはいえ、軽率な行動をしてしまった。



 これでもう俺は下に降りていくことしか残された選択肢はない。


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