デス・ゲーム17
「うおっ、えっ? 三島お前めっちゃ光ってるぞ」
「い、いや。俺に言われても」
そして三島を包んだ光が消えると、足の出血は治まっていた。それだけではなく、刺さっていたはずの鉄の棒も何処かへ消えていた。三島は現状を信じられないといった表情で、何度も何度も先ほどまで怪我をしていた部位を手のひらでさすった。
俺はこのとき、一つの仮説が頭に浮かんだ。
「なぁ、白木。このコントローラーってもしかして、チートコマンドを現実で使うためのものなのか?」
「チート……コマンド? ってなに?」
「あ、白木ってもしかして家でゲームとかやらないタイプ?」
白木は小さく頷いた。チートってどう説明すれば一般人にも伝わるのだろう。
「えーっと、だな。簡単にいうと、現実では出来ない魔法みたいなことが、そのコントローラーにコマンドを入力すると出来るようになるってこと」
「……魔法、なんてあるわけないじゃない。小学生じゃないんだから」
「いや、魔法ってのは例えだ」
俺は恥ずかしさのあまり急いで弁解した。まさか白木がそんな正論をぶつけてくるなんて予想だにしていなかったからだ。
「ともかく、現実では出来ないことを可能にする機械、ってことなんじゃないのか?」
「……できないこともあるけれど、たぶんそう。分かんないけど。私ももらったの。このコントローラー」
「誰から?」
「あなたたちの知らない人。あの部屋で出会った。今はもういないけど。だから説明しても無駄だと思う」
確かにそれも一理あると思い、もうそのことについては訊ねなかった。
「今のは傷を治すコマンド。よく使うから覚えてて」
「よく使うって……、これからも使うってことか?」
「……」
返事がないということは、肯定という意味だろう。俺はこれから、こんな闘いを何度かやり続けないといけないということか。
「……解放される条件はなんだ?」
「……解放?」
「このイカれたゲームのクリア条件だよ。なんかあるだろ。十回ゲームをクリアするとか、そんな感じの解放条件だよ」
「……そんなのないよ。強いていうなら、私たちが死ぬまで続く」
白木は透明な白さの細長い指で、髪を耳にかけた。そして、眉毛を少しだけハの字にして、困ったように笑った。