デス・ゲーム15
手足を全てもがれた蟻のように、傷口から血の霧を吹き乱しながら、バタバタともがいている。もうすぐ死んでしまうのだろう。
「ウォッ! ウォオ!」
白木は冷たい目を向けた。血に染まった透明な肌よりも、よく冷えた氷柱のように鋭い視線だった。彼女は光剣をかざした。
「……コイツを殺すのか?」
「……そうだよ。殺さないと私たちが帰れないから」
俺には、このモンスターの戦意は喪失しているように見えた。それよりも命乞いをしているようだった。
「……トドメささなきゃダメなのか?」
「……うん。仕方ないの。私も殺したいわけじゃないんだもん」
白木は俺の返事を待たずに、モンスターの体を切り刻んでいく。そして、まるで手術のように皮膚を切り開いて、中に光剣を刺し込んだ。そして体内の臓器を全て搔き回し破壊した。
「ごめんね……」
白木の口がそう動いた気がした。声はこちらまでは届かなかった。
臓器を全て破壊している過程で、モンスターはすでに息絶えていたが、白木は表情を変えずに最後までその作業を止めなかった。
それが全て終わると白木はようやく人間らしい自然な微笑みを俺に向けた。それが、闘いが終わって安堵から来るものなのか、モンスターを惨殺した快楽からくるものなのかは分からなかった。どちらにでもとれる笑い方をした。それが、初めて見た白木の笑顔だった。
「終わった……のか……?」
三島は虚ろな表情で、虫の音ほどの声量で呟いた。
「うあ……、血が止まんねぇ……」