デス・ゲーム12
この腑抜けた体を起こして三島を担いで逃げる力も気力ももうどこにも残っていない。俺は観念してモンスターの顔を見た。自分を殺す奴がどんな奴なのか、せめて見納めれから死にたかった。
見上げると、丁度モンスターの顔に照明のライトが照らされた。昔話に出てくる鬼のように怒り狂った顔だった。その怒りのせいか、それとも自分が今から殺されてしまう恐怖からか分からないが、なぜか、涙がボロボロと溢れ出した。
「ブルォ! グオッオッ!」
何かを訴えているような気がした。恐怖で脳みそが壊れてしまったのかも知れない。モンスターが右手を大きく振りかぶった。一瞬、動きが止まったかとおもうと、今度はコマ送りのようにゆっくりゆっくりと俺に向かって振り下ろされる。
なんだ。これなら避けられそうだ。こんなゆっくりなんだ。そうだ。体を動かせばこんなの簡単に避けられる。足を、動かせば、いいんだ。それか、転がって、避けるのもいい。だって、こんなに、ゆっくり、動い、てるんだ、から。
動かない。なんでだろう。体が石になってしまったように。動かない。
あぁ、そっか。もう死ぬんだ。ヤバい。死んだらどうなるんだ。天国行けるのかな。俺はこの世界でそんなにたくさん徳を積んだっけ? 誰かを笑顔にさせたっけ?
……いや、誰も幸せに出来なかった。それよりも、みんなを怒らせていたような気がする。いや、実際そうなんだ。ハハッ、俺もう死ぬっていうのに、未だに認められないんだ。自分なんか生まれて来なければよかったって、もう何万回も自覚してここまで生きていたのに、死ぬ直前になっても、気がしてるだなんて言って、誤魔化してるんだ。まだ、可能性を残してるんだ。こんな俺でも、生きててよかったって思ってもいいかも知れないって、そんなこと、あるわけないのに。あるわけないのに。
「うッーーーー」
横っ腹に何か大きな衝撃が走った。俺の体はコマ送りのまま、体が超低空で宙を舞いながら飛ばされる。その衝撃が発生した方向に目をやると、三島が腕を伸ばしていた。だから、三島が俺を吹っ飛ばしてくれたんだと分かった。
三島と目が合う。
三島の口が……、僅かに……、動いた気がした。声は聞こえなかったが、何を言ったのかは、分かった。
「見捨てないでくれて……、サンキューな……」
気のせいじゃないと思いたい。