デス・ゲーム11
「よし、なら出口を急いで探しに行こう。アイツに見つからない保障なんてどこにもないんだ。今こうして身を潜めてられること自体が奇跡なのかも知れない。だから、今行くぞ」
三島はやるべきことがはっきりと分かると、元気を取り戻した。瞳にも光が蘇って、真っ直ぐ俺に手を差し伸べた。俺がその手を掴むと、三島は力強く俺を引っ張り寄せた。
「絶対、二人で生きて帰るぞ」
そう言って、拳骨を体の前に差し出した。俺もそれを答えるように、拳に拳を当てた。
「おう」
建物を挟んですぐ後ろには、例のモンスターがいることが足音から分かった。俺たちが見つからないようにその場を離れようとしたとき、突風が吹いた。いや、これは自然の突風ではない。モンスターが腕を軽く一振りして、俺たちの後ろにある建物を破壊したのである。その際に発生した衝撃波だと気付いたのは、吹っ飛ばされて地面を無様に転がったあとである。
コンクリートが敷き詰められいる上を転がるのは、そういう堪えた。何回転もしたので、体中が擦り傷だらけだ。ぼんやりとぼやけた視界の向こうには叩き壊された建物と、モンスターが立っていた。
目が合う。見つかってしまった。
すぐそばで呻き声が聞こえた。そちらの方向に顔を向けると、三島が芋虫のように悶えていた。俺は傷んだ体に鞭を打ち、なんとか三島の方に駆け寄る。
「お……おい! 三島! しっかりしろって!」
「うぐあああ……いってぇえ」
意識はハッキリとしている。
「立てるか?」
俺は三島の腕を自分の肩に回して、起き上がらせた。
「ぐお」
「どうした?」
「足が……足が……」
三島の視線の先を見ると、鉄の棒切れのようなものが三島の右足を貫通していた。血が溢れている。止まる気配はない。実際に自分の目で、人間がここまで出血しているのは初めてみた。血は赤いというよりも、ちょっと黒かった。夜のせいかも知れない。三島はさすがに目に涙を浮かべている。相当痛いようで、少しでも動かすと声があがった。
背筋がゾクゾクと凍った。後ろから一歩ずつ、モンスターがこちらに近づいてくるのが分かる。震えて力が入らない足を両手で思いっきり殴り喝を入れた。辛うじて動くくらいにはなったので、呻いている三島を背負って、出口を探す。
何もしていないのに汗が異様に吹き出る。体はまだ震えている。息が上がって、頭がボーっとするが、ここで立ち止まっては確実に二人死んでしまう、という本能だけが体を前に進めた。
後ろを振り向くと、その瞬間殺されそうな気がしたから、俺は三島を背負って真っ直ぐ前を向いたまま足を進めた。音が、近づいてきているのが分かった。大きな地響きの発生地が、確実に自分と距離を縮めてきている。もうダメかも知れない。そもそも出口がどこにあるのかも分からない。
あと三十秒もすれば俺と三島は踏み潰されるか、白木のように殴られて玩具の人形のように吹き飛ばされるのだろう。
「グルォォオオオオオオ」
後ろのモンスターが鼓膜が破れてしまうんじゃないかと思うほどの雄叫びを上げた。その際に生じた衝撃波でバランスを崩し地面に倒れてしまった。
「う……あぁ……もう俺ダメかも」