うわの空(ラナ視点)
あたし達を見てキクの笑顔がどんどんしぼんでいく。
期待外れな顔を見て、ちょっと罪悪感
「えっと……、なんかごめん」
「うんにゃ、ようきたの」
気を取り直したキクが歓迎してくれた。
「お茶しか出せんが、飲んでいくか?」と聞かれたのでお呼ばれされる。
「来るのが分かってたら、お菓子を用意しとったんじゃけどな。すまんの」
そう言われるととても残念な気になる。
またキクの手料理が食べたいが、そんな時間などない。
お茶だけと言っていたがオレンジが一緒にでてきた。
出された紅茶に口をつけながら気になったことを尋ねてみる
「アトルの奴、帰って来てないのか?」
キクは悲しそうな顔をしながら頷く
「どれくらい?」
「もう半月になる」
「そんなにか……」
何やってんだ。アトルの奴。
最近なにやらフランに入り浸っているのは知っていたが。
完全に意気消沈しているキクの顔を見てなんと声をかけたらいいのかと視線を落とすと紅茶がカップからあふれていた。それをキクの目は見ているはずなのにティーポットをかたむけたまま注ぎ続けている。
「キク!こぼれてる」
「おっと!いかんいかんっ」
慌てたキクはポットを戻しテーブルを拭く。
「大丈夫か」
「大丈夫じゃ。これくらいすぐ乾く」
いや、そうじゃなくてキクの体のほうな。
「あの、イケメンの兄ちゃんは?」
「……クロ助はもうここに帰って来る気はないと思う」
「どうしてさ」
「もう自分は必要ないと思っとるんじゃろ。たまに顔を見せに来るくらいじゃ」
……それはむしろ、喜ばしいことだ。
正直あたしはあの野郎は気に食わなかったのだ。
商売をやっているとある種の人間に対して鼻が利くようになってくる。
あの兄ちゃんは闇側の人間だ。かかわらないに越したことはない。
本当はずっと心配していた。
キクを見ると折角いれた紅茶を飲まずにスプーンでノロノロかきまわしている。
私の言うことにボンヤリと相槌を打っては来るが
完全に上の空である。
これは重症だ。
「なあ、キク。クマリンに来ないか?」
「ここは一人だと何かと不便だろう?」
返事がないので「キク」と大きめの声をだすとハッと顔をあげた。
「すまん。考え事しとった。なんじゃったかの?」
やはり、聞こえてなかったようだ。ため息を吐いてやっと焦点が合った紅い目をみつめる。
「しばらくうちに来ないかって言ったの」
「でも、あー坊が帰ってくるかもしれん」
「そんなの置手紙しておけばいい。もちろんずっとじゃないさ」
「ただ、私もそんなに頻繁に来れるわけでもないからさ、いい感じに往復すればいい」
「クマリンの方がアトルの情報も入ってきやすいし」
「な?そうしよう」
しばらく毎日更新がんばります。




