白パン(ラナ視点)
今、うちは大繁盛している
キクから例の白パンの作り方を教えてもらい売りにだしたら大ヒットしたのだ。
最初は予想に反して全く売れず焦った。
黒いパンを見慣れている人々には、白いパンが生焼けに見えたようだ。
まずは食べてもらうことからと思い一度赤字覚悟で配って歩いた。
すぐに、もう一度食べたいという人が買いに来て、そこからは雪だるま式に増えて行った。
白いパンの評判は口伝いで広がり客が殺到した。
店に列ができ、その列を見て興味を持った人がまた客になる。
うちの店は雑貨屋からパン屋へと変わっていった。
あたしたち家族だけだとさすがに回らなくなり店を拡げ、従業員も増やした。
それでも追いつかず、店舗を増やした。
おかげで少しは落ち着いたものの最繁時はまだまだ長蛇の列は出来る。
今、クマリン以外にも店舗を増やそうと計画中だ。
クマリンの外からもこのパンのために訪れる人が後を絶たないのだ。
この間キクを引き連れてクマリン城に白パンを献上しに行ったりということがあった。この騒ぎを聞きつけたらしくお呼び出しがかかったのだ。あれにはビビった。
今日キクの家に訪れたのはリターンを渡すためだ。
そんなの要らないと言われたが、白パンの発案者はキクであり、キクの家の魔法石付きの道具おかげで良質な小麦粉が使えている。
つまりは今うちが儲かっているのは全部キクのおかげだ。
自分たちだけおいしい思いをするのは忍びない
収益に対して考えるとほんの些細な額なのだがなんとか受け取ってもらっている。
木々に囲まれた緩い坂道をぬけると視界がひらける。
以前と違い麦以外の作物玉ねぎやナスやダイコン等いろいろ植えてあるが、ちゃんと麦畑も残っている。
よしよし、今年もちゃんと植えてるな。
人手が足りないから麦はもう植えないようなことを言っていたが、こんなに良い土地があるのに勿体ない刈り入れ時は人を集めるからと説得したのだ。
あいかわらず、ここの麦は実りが良い。麦に限らず全ての作物が上手く育っている。よほど土壌がよいのだろう。
「良いところですね」
隣に座るジゴの言葉に「だろう?」とわらう
最近目の回るような毎日を過ごしているため、以前と変わらずのどかな様子に癒される。
ここにくるのは久しぶりだ。
今日は親父は来ていない。店の仕事で大忙しのため今日はジゴと一緒にきた。
このジゴ=キシンは親父が連れてきたのだがなかなか有能な男だ。
今後ジゴに経営の一端を任せるために取引先等に連れまわしいろいろ教えこんでいる。
本当は自分自身の手でやりたいのだが、任せれるところは任せないと自分たちが潰れてしまう。
馬車から降りて玄関へと向かうとバーンと玄関の扉が勢いよく開かれ驚く。
「あー坊!!」
中から息を弾ませたキクが現れた。




