餅(アトル視点)
冬が訪れた。
最近キクは暖炉の前の椅子に座り、ぽけーっとして一日を終える。
本当にぽけーっとしたままだ。
外に出れない日が続くと俺は暇で暇でしかたないのだが、キクは少しも苦じゃないようだ。
むしろ幸せそうにすら見える。
お腹が空いたら暖炉で餅を焼いて食べる。
この餅は以前がんばって作った田んぼの稲を収穫してつくったものだ。
もち米という米の種類だったらしく、キクの指導の下、餅つきをした。
これは意外と楽しかった。
楽しかったのだが、この出来た餅のせいでキクは明らかにに太った。
とにかく毎日のように餅ばかり食べている
帰ってきたクロがキクの姿を見て驚いていた。
クロはラクタムの町から帰ったその足ですぐ出かけて行ってしまいそれきりだったのだ
だから本当に会うのも久しぶりだ。
「おばあちゃん、太りました?」と俺にこそっと耳打ちしてきた。
「おい!クロもばあちゃん太ったってよ」
「ちょっと!アトル君!」
「いいんだよ!はっきり言ってやらなきゃ」
「ほら見ろ!俺が言った通りだろ!やっぱり太ってるんだよ!」
これだけ言えばさすがのキクもショックを受けて運動するだろう。
「何度も言ってるだろ!運動しないで食っちゃ寝してるから太るんだ!」
「いいんじゃよー。ちょっと太ってるくらいの方が健康的じゃ」
駄目だ!全然気にしてねえ!
「なあにが、健康的だ!一日中そこに座ってぽけーとしやがって!」
「昨日は腰が痛い、一昨日は風がつよい、その前は雪が降ってる」
「やる気あるのか」
ぐー
「寝たふりすんなーーー!!!」
「最近、餅!モチ!もち!餅ばっかじゃねーか!俺はもう餅は飽きた!パンが食べたい!」
俺はパンの焼くにおいで目が覚める生活が気に入ってたんだ
それなのに米が来てから全く焼かなくなりやがって!
それでもごはんがでてくるならいいかと思ってたが、最近それもやめやがって!
「ちょっと最近なまけ癖が目に余るぞ!」
「なあ、頼むよー。手伝うからさー。またばあちゃんの焼くパンが食べてーよ」
キクの体をゆすって懇願すると
……マジで寝てやがった。
イラッとしたので、キクの足にかかってる毛布をはぎ取り、部屋中の窓を全開にしてやった。
冷たい風が吹き荒れる中、目を覚ましたキクが叫んだ
「鬼じゃーーーーー!!!」
次の章のスタートが決まらない。とりあえず稲のお話は回収しておこうと思い投稿。




