骨抜き
「好い顔になったわね。素敵」
嬉しそうに女が微笑む。
「甘いことしてるから、こんなことになるのよ?」
「ええ、反省してます」
女が「素敵」と評するクロ助の顔は余裕がなく、例の陰湿な空気をまとっていた。
「こちらは何を拾って何を捨てるか決まっているので、どうぞ選んでください」
「退くか、逝くか」
二人の間に緊迫した空気が流れた。
なんじゃ?仲悪いんかこの二人
「……まさかこの程度で僕を仕留めれるなんて思ってないですよね?」
「まさか。イニド姉弟とはちがうわ」
「ただ興味があったの。随分可愛がってるようだったから」
わしの髪の毛に女の指がからむ。
「解放して欲しい?」
「解放してくれるんですか?」
「……質問してるのは私のほう」
余裕のないクロ助に対し女は余裕綽綽のよう
「解放してください」
神妙な態度でクロが答えた
そのクロの姿をみて女は満足そうに微笑む。
「別に良いわよ? でも、このまま解放するのは勿体ないわねえ」
優しく髪の毛を触り続ける指が今度は三つ編みを持ち上げた。
なんじゃさっきから。
「こんなに必死なあなたは滅多にお目にかかれないもの」
クロ助の必死な顔を見てクスクスと笑う。
「……どうしたら解放してくれますか?」
笑われたクロ助は苦い顔をした。
「そうねえ。どうしようかしら」と焦らす女はとても楽しそうだ。
完全に女のペースじゃの。
それにしても、解放するだのしないだの一体なんの話じゃろな。
「じゃあ、私とキスしてくれるかしら」
「嫌です」
クロが即答した。
「……ええじゃろ~。してやったら~」
キスの一つや二つ減るモンでもなし。
ケチじゃのお~。
「全く……他人事だと思って」
わしの野次にクロはため息をついた
「宿の娘に何度もされとったじゃないか」
「……」
「……」
にらみ合っていた二人が一斉にこちらを向いた。
「は?」
「何度も?」
「そうじゃよ、ぶっちゅぶっちゅと何度もされとった」
「……」
女が白いまなざしをクロに向ける
「あー……その話はまた後で聞きます」
「じゃからチューしてやりゃええじゃろが、今更出し惜しみしても仕方なかろ?」
「言っときますけど、あの人にキスされたら魂もっていかれますからね」
「ほほう。あんたそねな上手いんか」
いきなり話を振られた女はびっくり顔でこちらをみた。
「へっ? ええ、そうね、そうなるのかしら……?」
「クロ助丁度ええ、骨抜きにされたらええじゃろが」
のお?
と同意を求めると女は、口を覆い頬を赤く染めて目を泳がせた。
「もう黙っててください」
話がおかしくなる。と眉間を押さえたクロ助に苦情を言われてしもうた。
クロ助は本当奥手じゃの。
「懲りないですね。そんなことをしても無駄ですよ。」
「無駄かどうかは、やってみないとわからないわ」
「それに、自力で墜とすのも楽しいものなのよ」
「……それは怖い」
わしの話は無かったことにされたらしい。
すいません。最初の方整理したので、話数がおかしくなっています。
ご迷惑をおかけしてすみません。




